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詩を風にのせて
【ファンタジー 恋愛小説】

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詩を風にのせて 〜第2話 旅立ち〜-6

「随分と手荒いご挨拶だな、ククク」
男は甲高く笑う。
「何故ゾンビを召喚して街を襲おうとする?」
リーシャは睨み付け低い声で言い放った。
「新しく授かった力を使いたくてなァ、ククク」
「力?ゾンビを大量生産する力のことか?」
「左様」
「にしては随分と弱いが」
「直に日も暮れる。さぁ、遊びの時間は終わりだ。素直に逃げていればよかったものを。ここにきたことを後悔させてやる、ククク」
男は不吉な笑みをこぼす。
日は完全に沈んでしまった。
「最後に聞きたいことがある。その力は誰にもらった?」
「そんなのは貴様の知ることではない!」
そう言ったのと同時に男はゾンビを大量に召喚し始めた。
「ユキ、そっちは任せて大丈夫?」
「リーシャはアイツを倒すってことだよな?」
「早い話がそういうことね」
「どのくらい時間かかる?」
リーシャはちらっとレオを見る。
レオは相変わらず荒い呼吸をしている。
「そうね、10分もあれば…」
「どのくらいかかろうとアイツを倒すまでは自力でなんとかしなくちゃいけないんだろ?なら、やれるところまで頑張るさ」
「そう。それじゃ健闘を祈るわ」
リーシャは男に向かって突き進んでいった。
その場に残された者はなんとか身を守っていた。

リーシャは男と対面していた。
「あの者たちをあそこに放っておいてもよかったのか?」
男が静かに言った。
対するリーシャの返答。
「まだゾンビも強くなってない。あの程度ならあの子たちでも凌げる」
「ほう。では、お前はこの私を倒せるとでも言うのか?」
リーシャは鼻で笑う。
「他人の力量も見極められないのに自惚れたことを言うのね」
リーシャの表情には余裕が窺える。
「なに?」
男の表情が変わった。それまでに浮かべていた笑みも消えて、徐々に怒りが顕になってくる。
「力をもらわなければゾンビも召喚できない貴方ごときが私に勝てるわけがない」
相変わらずリーシャには余裕がある。
「小娘が!そのように言ったことを後悔させてやる!」
男はそれまで召喚していたものとは形も大きさも違うゾンビを3体召喚した。
「これぞ、我が最強のゾンビ!」
そのゾンビはリーシャよりもはるかに大きかった。動きもこれまでのゾンビと比べて断然速い。
だが、リーシャは身動き一つせずにそれらを軽く見据えている。
ゾンビがリーシャに襲いかかる。
その刹那、男の視界からリーシャが消えた。
「なっ!」
男が短い驚きを漏らした時にはすでに3体のゾンビは再生も不可能なくらいに斬り刻まれ、そしてリーシャは男の喉に剣を当てていた。
ゾンビは塵となって風化していく。
「これのどこが最強なの?大して今までのと変わってないじゃない。それに本物のゾンビはもっと強い。所詮は力のない者が召喚したゾンビなのよ」
リーシャは囁いた。笑みを浮かべて。
「持っているのでしょう?余計な手間をかけさせないで」
そう言って、リーシャは男の喉にさらに剣を近付けた。
「何の話だ」
「とぼけないで。ゾンビ召喚器を出しなさい」
「馬鹿め。出せと言われて出す奴なんかいるわけないだろう?それにこれで私を追い詰めたつもりか?ゾンビを出そうと思えばいつでも出せるんだぞ」
男は再び不吉な笑みを浮かべた。
「くっ」
リーシャは男から一歩離れる。
「いでよ、我がゾンビたち」
男の胸がかすかに黄色に光る。
そして―
ゾンビは出てこなかった。
「ど、どうして!」
男は慌てふためく。
「胸に隠し持ってるみたいね」
リーシャはそう言って男の胸に強烈な蹴りを入れた。
パァン。
ガラスのようなものが割れた音がした。
男は胸を押さえてうずくまる。


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