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詩を風にのせて
【ファンタジー 恋愛小説】

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詩を風にのせて 〜第2話 旅立ち〜-5

「だめだ。俺もレオも自分自身で手一杯でサクラを守りきれる保障がない。だからここにいて帰りを待っててほしい」
「でも!」
「来たいならくればいい。ただし自分の命は自分で守ることね」
リーシャは冷たく言い放つ。
「どうするんだ、サクラ?」
レオが聞く。
「私は…」

急に空気がひんやりと重くなった。

リーシャはそれを感じとる。
「きた!北西のほう!」
聞くと同時にユキは走り出す。リーシャも続く。
慌ててレオとサクラが後を追った。

「ユキ、昨夜誰がどこを怪我したのか教えて」
走りながらリーシャは聞く。
「俺は頭を殴られた。サクラは首を絞められた。レオは…」
ユキは口ごもる。これを言ってしまえば、不自然だということがわかってしまうからだ。
「切り付けられた。違う?」
リーシャはまるでユキの心を読んでるかのようだ。
「どうして?!」
リーシャはユキの疑問を無視して続けた。
「切り付けられたのに一晩で治癒するなんて人間では有り得ない。誰かが治癒魔法を使ったわね」
「……」
「そこのところは後で聞かせてもらうわよ」
観念したかのようにユキは、
「ああ、わかったよ」
と言った。
こいつはどうしてこんなにも鋭いのだろうか…。
「あと、最悪の場合を想定しておいたほうがいい」
「えっ?!それはこの中の誰かが死ぬってことか?」
「その可能性が高い」
「じゃあどうして二人を連れてきたりしたんだよ!!」
「時期わかるわ」
その後ユキがいくら聞いてもリーシャは答えなかった。

日も暮れかかっている頃。
おびただしい数のゾンビがいる。数百体といったところか。
辺りは開けていて平地だ。見晴らしがよく、遠くにあるがさっきまでいた街がよく見える。
レオとサクラは息を切らしている。
「まだ街から随分と離れてるけど…」
サクラが言う。
「まだ日も暮れていないからゾンビに再生力はそんなにないわ。今なら貴方たちでも倒せる。ゾンビの発生源まで一気に行く。遅れないで」
そう言ってリーシャは剣を抜く。
深呼吸をし、再び走り出した。今度は剣を振りながら。

ユキとレオは付いていくので精一杯だった。
大量のゾンビを切りながら走ることは初めてだったからだ。
それにしても…とユキは思う。
リーシャの剣の扱いは見事だった。
速い。
ただそれ一言に尽きる。
ユキの目からは速すぎて、見えないのだ。
強いて言うなら、舞を踊ってるといったところか。
速さに加えて美しさもある。
一つ一つの動きがまるで完成された絵のようだ。
それでいてあっという間にゾンビ数十体を斬り捨てていく。
そこには情け容赦は一切ない。
この、細身の少女のどこにこんな力があるのだろうか。
ふと、リーシャが止まる。
ユキは前を見た。
黒のマントで全身を覆っている男が現れた。


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