詩を風にのせて 〜第2話 旅立ち〜-10
宿の部屋に戻り、ユキはレオを寝かせた。
宿に戻る頃にはもう日の出も近かった。
「ユキ、私は外でぶらついてるから、話はつけておいて」
リーシャはそう言って部屋を出ていった。
なかなか口に出せなかったが、リーシャがきっかけを与えてくれたおかげでユキは覚悟を決めて話し出した。
「サクラ…よく聞いてくれ。俺はリーシャと一緒に世界を旅する。レオとサクラはこの街で暮らしてほしい」
「どうしても3人で暮らせないの?」
「俺はもっと強くなりたい。サクラもわかるだろう?俺はリーシャの足下にも及ばない。強くなって、そして父さんを抜きたい」
エイミに協力するとかではなく、これがユキの正直な気持ちだった。
「私たちもついていったらだめ?」
その言葉にユキは首を振った。
「わかった、それがユキのやりたいことなら誰にも止める権利なんてないもんね」
「ごめん…」
「それに私たちがついていったら足でまといでしょ?だから…いいよ、気にしないで」
サクラは笑った。
「ありがとう、サクラ」
ユキも笑う。
「いつ出発するの?」
「今日中に出発したいと思ってる。ただレオが…」
「今日中に目を覚ましてくれればいいんだけど…」
二人は昼過ぎまで待った。
だが、レオは目を覚まさない。
そこにリーシャが戻ってきた。
「話はついた?」
「レオが目を覚ますのを待っているんだ」
ユキが答えた。
「薬を買ってきたから飲ませるといいわ」
リーシャはそう言ってユキに渡してまた部屋を出ていった。
ユキから受けとりサクラはレオに飲ませた。
程なくしてレオが目を覚ます。
「ここは…?」
「レオ、大丈夫?」
「ああ、大丈夫だ、サクラ。俺は助かったのか?」
「全部リーシャがやってくれたんだ」
ユキは言う。
エイミを説明するよりリーシャがしたと話せば後々面倒でなくなるから。二人とはここで別れてもらうから、リーシャも許容してくれると思うわ。
そうエイミが言っていた。
そして、ユキは先程サクラに話した自分の決意をレオに話し始める。
レオは黙って聞いている。
ユキが話し終わると、レオは静かに言った。
「なんとなくそんな気がしてたんだ。ユキは村にいるより世界を旅してるほうが似合ってるよ。絶対に強くなれよ」
レオはユキに握手を求めた。
「たまには私たちに会いに来てよね」
サクラもユキと握手をする。
「わかったよ」
3人は共に笑いあった。
夕方。
ユキはリーシャと共に街を出発した。
自分の運命に立ち向かう第一歩を踏み出したのだった。
続く