HAPPY LIFEJ-2
「…おまたせ、行こっか」
「あー腹減ったぁ、なんか食ってかない?」
「いいよ。いつものとこでいい?」
私、今どんな顔してるんだろ。平然を装ってるつもりだけど、きっと変な顔になってるだろうな。
ハンバーガーショップへ向かった。
一緒にいる時間が多くなればなるほど会話の中に『いつもの』って増えテクる。二人だけが知ってる特別な感じがしてなんだか嬉しい。
なんとなく会話が続かなくて、思わず聞いてしまった。
「なんか…機嫌いいね。いいことあった?」
すごい勢いでハンバーガーにかぶりつく。目元が笑っている。機嫌がいいときはいつもそう。
「ん?別に、気のせいじゃん」
目をそらしてそう言う。嘘をつく時はいつもそう。
私たちが付き合う前、雄大のお姉さんの千栄先輩にこっそり教えてもらった雄大の癖。
そういえば元気かな、先輩。卒業式以来会ってないや。
「千栄先輩、元気?」
「ん〜あぁ、元気だよ。今日ウチに斉木先輩が来るって言ってたかな」
「そうなんだ」
「ウチ来る?」
「え?」
「会いたいんだろ?来ればいいじゃん」
「…うん」
ってことで渡辺家へ行くことになった。
「上がってよ、散らかってるけど」
「あ、うん。おじゃましま〜す」
家庭的であったかい感じのする家。お母さんの手作りのものと思われるリースや小さなぬいぐるみなどがセンスよく飾られている。
「俺の部屋、階段上がってすぐのとこだから先行ってて」
「わかった」
差し出されたスリッパをはいて階段を上がろうとした時。
「あっ、ついでにこれ持ってって」
ついでにって、私、渡辺家に来たの初めてなんですけど?
手渡された雄大のカバンを持って再び上がる。ドアの『YUDAI』と書かれたプレートが目に入った。これもきっとお母さんの手作りなんだろうな。
「明日香ちゃん?」
突然自分の名前を呼ばれて驚いた。
「千栄先輩!」
「きゃ〜久しぶりぃ、元気だった?」
「はい!先輩も元気そうですね」
「まぁね。あっ、ねぇ、ちょっとこっち」
笑いながら手招きをする先輩。なんだろうと思いながらついて行った。
そこにもやっぱり『CHIE』と書かれたプレートが。中からは斉木先輩の声が聞こえる。