『最強男女』―第一章―-1
―第一章―
黒板の前に立つ二人の美少女。男女問わず、クラス中の人間がその美しさと可愛らしさに目を剥く。
「茅原斎です、よろしく」
簡単に挨拶をしたのは長身の少女、斎。
「か、苅野亜弥菜です……よろしくお願いします」
緊張した様子で挨拶をしたのが、小柄な少女、亜弥菜だ。
なんだかんだあって休み時間。二人は校内の案内地図を見ながら歩き回っていた。
「おぉ〜っ! どこもかしこも広ぉ〜っ!」
斎が楽しそうに叫ぶ。
「迷っちゃいそうだね」
「私、すぐに迷える自信あるよ」
「自慢にならないって……」
斎の言葉に亜弥菜は苦笑する。
二人は迷いながらも、どんどん進んでいく。
「わぁ〜、ここって図書室? てか、ここだけやたらでかくない?」
「あ、地図に『何でも揃う図書室』って書いてるよ」
「マンガもあるかな?」
「あるよ。マンガから雑誌、気難しい本までね」
明らかに二人の声ではない男の声。背後を二人はそっと振り返る。
「こんにちわ。初めましてだね」
「どちらさん?」
斎は問う。
問われた男は、紗重乃績と名乗った。切れ長だが優しい目、麗人かと見紛おう程の、中性的だが凛々しく、美しい顔をし、色素の薄い茶色の綺麗な髪をしている。
長身の斎よりまだ大きく、185cmはある身長に似合う身体付きだ。
績は二人を見下ろして笑顔を作る。
「もしかして、転校生かな?」
「はぁ……そうですが、何か?」
亜弥菜より軽く前へ出て、斎は績を見上げた。
「まぁ、そう警戒しなくてもいいよ。取って食べはしないから」
やはり優しく笑う績だが、斎は表情を変える事はなかった。
「僕は生徒会長だからね。新しい仲間に挨拶するのが礼儀だと思って」
「そうですか、それはどうもご丁寧に。ではさようなら」
「あっ、ちょっと……」
亜弥菜の腕を引いて斎は歩き出した。が、亜弥菜が小さな悲鳴を上げる。斎の目が鋭くなる。
「亜弥菜に触るな」
思ったよりも低く冷たい声がした。それには績も驚き、亜弥菜の腕を掴んでいた両手を上げて、降参のポーズを取る。
「えっと、ごめんね、怒らせるつもりはなかったんだけど」
「いいえ。まだ何か?」
斎は不機嫌そうに績を見た。績は相変わらず笑顔だ。
「分からない事だらけだろうから、会長だからとか関係なく、いつでも声掛けてね。それじゃ」
それだけ言って、績は来た道を戻って行った。
「いい、人そうだね……」
「あーゆう奴が一番危ない」
二人は再び歩き出した。
これが最強生徒会長様と、最強少女との出会いだった。