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『最強男女』
【学園物 恋愛小説】

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『最強男女』―第二章―-1

―第二章―



転校二日目にして、斎と亜弥菜の下駄箱は大変な事になっていた。
「亜弥菜さんよ、確かここは靴を入れて置く場所ではございませんの?」
「そ、そうだと思うんだけど……」
蓋が閉まらない程に溢れる手紙さん達が、たくさんこんにちわしていた。
「可哀相な手紙さん……綺麗に書かれたものもあるだろうに、もうゴミみたいになってるよ……」
落ちた手紙を涙ながらに拾いながら、斎は全ての手紙さん達を鞄へ押し込んだ。
「しかしよくもまぁ、どんな奴かも分からんのに、手紙なんか書こうと思うよな」
「みんな恥ずかしがり屋さんなんだよ」
「ひっ!?」
背後から手が伸び、肩に軽く触れる。低い声は非常に耳元に近い場所で響く。
斎はその場から飛び退いた。
「やぁ、おはよう。朝からモテモテだね」
「か、会長……さん……おはようございます」
亜弥菜はぎこちない笑顔を浮かべながらも、軽く頭を下げて挨拶をする。
「亜弥菜っ! こんなふざけた奴に挨拶なんかせんでいいっ!」
「まぁまぁ、そう怒らないで。せっかくの可愛い顔が台無しじゃないか」
おふざけ以外の何者でもない登場の仕方に、斎の額に青筋が立つ。
「僕は嬉しいよ。仲間が出来たから」
「仲間?」
「一緒にすんな」
亜弥菜と斎が呟いた後、績が「ほら」と指差した先には、二人同様、手紙さん達がこんにちわしている下駄箱が一つ。
「可哀相に……みんな見た目に騙されて……」
「……い、斎ちゃん……」
「本当にねぇ」
斎を止めようとした亜弥菜すら固まる言葉が、績の口から放たれた。
「人を見た目で判断したら駄目だって教わらなかったのかな」
笑顔を崩さずに、績が呟いた。
二人は呆然と績を見ているだけだった。
 績と別れて、二人は教室へ向かった。
「何故自分を否定する言葉を、あぁも満面な笑顔で言い放つかねぇ」
「会長さんて不思議な人だね」
「あたし、あんなに掴めない奴初めて。苦手だわ」
斎は、なるべく関わりたくないと心の中で呟いて、ため息を吐いた。





昼休み。亜弥菜は職員室に用があり、不在だった為、斎は図書室にでも行こうと教室から出た。

そして数分後―――。

 斎は突然立ち止まり、呟く。
「……迷った……」
そう、広過ぎる校内で、方向音痴の斎は迷っていた。
「ただ……ただ、まっすぐ来ただけで何故迷うっ!?」
斎はため息を吐き、その場にしゃがみ込む。
「この学園で一人になったら危険だ」
そう呟き、斎はまたもため息を吐いた。
「ん? あれ、あそこに見えるのは……」
斎の目に映ったのは文字は『生徒会室』だった。が、斎は一瞬考えた。
生徒会といえば、真っ先に思い出すのは、あの会長だ。斎は会長が苦手だったりする。誰かに道を聞こうにも、生徒会室の周りには教室らしきものもなく、人一人いない。自力では、絶対に迷ってしまう。今までがそうだった為、斎は覚悟を決めた。
生徒会室の前で、斎は口をポカンと開けて、間抜けな顔をしていた。


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