たったひとこと【第6話:写真は嘘を語らない】-5
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何とも荒涼とした風景だった。ホテル自体はきらびやかなのにそこまで続く道が寒々とした道で同じ敷地内にあるとは思えない。平気でゴミも落ちてるし、コンクリの裂目から草も伸びてきている。
行き交う人はカップルもいれば、親子程歳の離れた怪しい男女もいる。
しかしこの状況。端から見ると、成之と詩乃がご休憩しに来ているように見えるだろう。
2人もその事を意識して頭から離れなくなって来ていた。真っ赤になっている顔と頭の中ではぐるぐると回っている。
成之(詩乃)とラブホテル街を歩いてるぅ―!!
もしかしたら、このまますぅ―っと行っちゃたり・・・きゃ―ジャンルは官能じゃないのに〜!
「ふっ、2人が曲がるぞ」
「へっ、うっ、うん!」
そして2人が辿り着いた場所は・・・
「え?」×2
普通の喫茶店。
「時間潰しか?」
「あれ?」
何故か2人はカウンターの奥の部屋に入った。
30秒後、出てきた姿は・・・
店員の制服に身を包んだ六呂とマリ姉。
呆然としている窓の外の2人。
「んじゃ六呂、今日もいい汗かけよ」
「・・・ん」
テ―ブルを拭き始める六呂。その姿勢のまま、窓の外の2人と目が合う。
外であたふたしている2人。
「・・・外、何かいるぞ」
目を凝らすマリ姉。
「・・・何やってんだ、あいつら?」
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「そっ、その写真見て私がコイツとラブホテルにぃっひひひひ、あっははは!!」
大爆笑のマリ姉。その腕には風紀★委員ではなく、店長☆代理と書いてある。
「笑ってないでちゃんと説明しろよ」
「あっ、ああゴメンゴメン」
目をこすって一息つく。
「六呂、話してもいいか?」
「俺と麻里音さんがそういう仲だと勘違いされるよりマシだ」
言いつつも不服そうな六呂。
「実はな、コレの為にウチでバイトしてもらってたんだ」
先程ファンシ―ショップで購入した紙袋を掲げる。
「明日、くるめの誕生日でさ、プレゼント何をあげたらいいかと言って来たからアドバイスしてたんだ」
背を向けて黙りこむ六呂。少し耳が赤い。
「で、このシャイボ―イをウチで雇って資金を稼いでたって訳だ」「この喫茶店って・・・」
「ああ、父さんが経営してる。たまに私もこうやって店に入る」
なるほど・・・納得
「まあラブホテル街の最極端にあるから勘違いされそうだな。私たちも悪かった。話してればよかったな」
「これで潤原にも話せるね」
ほっとする詩乃。