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雪溶けて
【悲恋 恋愛小説】

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雪溶けて-1

あの日、あの時。
あなたがふと口にした言葉を今、噛みしめている。
生まれて初めて。
本当に、心から好きだと思える人に出会えた私は。
そんなあなたの一言さえ忘れることが出来なくて、いつまで経ってもあの日から前に進むことは出来ていない。
早いものでもう、私も大学院を卒業しようとしているけれど。
あなたの言葉は本当だった。

「もう、二度と会わないだろうな。きっと。」

あの日。
卒業って言うのは、今までの関係を清算してしまうことなのだと知った。
毎日のように顔を合わせていたクラスメートとも。
部活の仲間とも。
担任を始めとする、お世話になった先生とも。
いつも一緒にいた親友とも。
離れ離れになる…。
3月に吹く風は、冷たいけれど微かに甘い香りを含んでいて。
けれど心に染みる刺々しさを、大いに持つのだ。

「そだね。」

あなたの言葉に、平気なふりをして応えたけれど。
私の心の乱れは。
巧く隠せていましたか―?

  * * * * * * * * * *

冗談のつもりだった。
もう二度と会わないなんてこと、ないだろうと。
きっとまたいつか出会うことができる。
そんな自信があった。
あの日からもうすぐ6年。
あの時と同じ風が吹く、卒業の季節を迎える。
俺がふと口にした言葉は、冗談から真実に変わろうとしている。
もうすぐ―。

「そだね。」

会えると。
言ってほしかった。
またいつか会うことができる、と。
そんな言葉を待っていた。
けれどこれが俺の選んだ道なのだと、諦めるしかなかった。
何度思っても。
幾度思い返しても。
俺には…あの言葉以外の選択肢はない。
己に、そう言い聞かせて。
日々を過ごす。

「納得かよ。」

少しだけ。
俺の想いを込めて言ったつもりだった。
あの時ほど。
一瞬にして自分の言葉を、消してしまいたいと思ったことはない。
そんな俺の動揺に、君は気づいていただろうか―。


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