刃に心《第18話・戦、始まりて…激闘編》-5
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2年E組の教室。
「ふふ…ふははは…」
一人の男が高笑いをしていた。これといった特徴は無く、所謂モブキャラ、ザコキャラといった類いである。
「何か…変なこと言われてた気が…
いや、今はそんな場合じゃない…ふふ…暗黙の掟だか何だか知らないが、見つからなければいい話だ…この下剤によって地獄を見るが良い…」
ザコは自分の力量も知らずに思い上がり、粉末タイプの下剤を盛ろうと水筒の蓋を開けた。
その時、ふと気配を感じて振り返ろうとした。
「動くな」
だが、その前に少しくぐもった声が聞こえ、喉元に冷たい何かが添えられる。
「静かに、手に持った物を置いてもらおう」
圧倒的な威圧感と恐怖に額からたらたらと脂汗が滴る。指先一つ動かせない。
「クラスは?」
「………」
「答えろ」
「い、1のDです!」
「1年とはいえ、掟を知らないとは言わせないぞ」
ナイフのような鋭い言葉にザコは震える手で下剤を机に置いた。
「お前の出場種目は?」
「か、借り物競争です!」
「もうすぐだな」
「は、はい!!」
フッとザコの喉元から冷たさが離れていく。
思わずほっと息を吐いた。
その瞬間、首筋に鈍い衝撃が走り、目の前が暗転する。何が起こったのか確認する前にザコは気絶した。
「悪いが、競技終了まで寝ててもらおう」
ザコの首筋に手刀を打ち込んだ疾風は倒れ込むその身体を片手一本で支えると、仕留めた獲物の如く脇に抱えた。
「ウチが優勝候補の一角だとしても、来るところを間違えたな」
そう言って、窓の外を見ると自分のクラスが見事に予選を突破していた。
「成功したか」
「……うん…」
「のわッ!?」
突然かけられた背後からの声に疾風の口から奇声が漏れる。