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刃に心
【コメディ 恋愛小説】

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刃に心《第17話・戦、始まりて…準備編》-1

天高く、馬だけでなく人間も肥ゆる秋。
疾風達の通う、この日ノ土高校は体育祭を二週間後に控え、何やら不穏な雰囲気に包まれていた。
例えば…今、二人の女子生徒が廊下で仲良く笑顔で話をしている。

「ミヨちゃん、体育祭のメンバーって決まった?」
「ううん、決まってないよ♪」
「またまたぁ、実は決まってるんじゃないの♪」
「ううん♪全然♪そっちは?」
「ううん♪まだ♪」
「そう♪」
「そうなの♪」
「じゃあね♪」
「うん、じゃあまた♪」

うふふ♪あはは♪と笑いながら女子生徒達は別れていく。そして、互いの姿が見えなくなると…

「「ちっ…」」

………このような、友達同士が笑顔で武装して腹の内を探り合う光景がこの高校の至る所で見受けられる。

《第17話・戦始まりて…準備編》

◆◇◆◇◆◇◆◇

そんな光景を不審に思いつつ、楓は廊下を歩いていた。

「小鳥遊さ〜ん♪」

後ろから声をかけられ、楓は後ろを振り返った。
隣りのクラスの女子生徒がにこやかな笑みを浮かべている。
確か、佐藤とか鈴木とかそういう感じの無難な名前だったと思う。

「何用か?」
「あのね、体育祭のメンバーって決まった?」
「確か…」

楓が答えようとしたとき。

「させるかああぁぁあああ!!」

希早紀が飛び込み、楓の口を塞いで、連れ去る。

「後、ちょっとだったのに…」

希早紀に引きずられながら、楓はそんな声を聞いた。

◆◇◆◇◆◇◆◇

「…戦に必要なもの…天の時、地の利、人の和…そして、現代においてはここに情報の量が加わる!!」

薄暗い部屋に四十名程の男女が鮨詰め状態になっている。
此所は我らが主人公、忍足疾風の家。さらに詳しく言うと、その居間。
その中で、何処から持ってきたのか、ホワイトボードを前にして持論を展開する武慶を日ノ土高校2年E組の面々は真剣な面持ちで聞いていた。

「いいか!?俺達は十分に…否、十二分に優勝を狙える至高のメンバーが揃っている!!
俺は優勝の二文字を目指して全力で邁進する所存だ!!!」

湧き上がった拍手は重なり合って部屋を支配する。

「それに伴い、体育祭に拘わるE組の全情報を最重要機密として指定する。今日も小鳥遊が隣りのクラスから探りを入れられた。諸君らも、そういう状況に陥った場合、うふふ♪あはは♪で済ませてほしい」

そう武慶が忠告を促す。
その時、居間のドアがコンコンと音を立てた。


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