HAPPY LIFEI-2
「…かわいいな」
俺は思わず口にしてしまったことに驚いた。もちろんかわいいと思ったのは明日香の方なわけだけど。
明日香の顔を見ると、目をまんまるにして口をパクパクさせている。よく漫画やアニメでみるような…そうその顔!
「あの…さ」
「いや、ちがうんだ!」
「違うって何が?」
「だから、さっきの…」
「明日美には言ったりしないから大丈夫よ」
完全に誤解だ。
「そうじゃなくてだな…」
「何よ、はっきりしないわね」
「その…かわいいって言ったのは、アイツのことじゃなくて」
「…」
「明日香のこと!」
俺は明日香の目を見て言った。冗談だと思われたくなかったから。
「俺、明日香のこと好きだ」
「…」
一瞬の沈黙がとても長く感じる。全身が心臓になったみたいにドクドク鳴っている。
俺、なんでこんな時に告白してんだ?
時間にしてたったの5秒。たった5秒の沈黙が堪えられなくて、俺はその場から立ち去った。
それから4日間、俺と明日香はろくに話もしなければ顔を合わせることもほとんどなかった。答えを聞くのが怖くて、無意識に避けていたのかもしれない。
桜栄祭は予定通りに行われた。忙しかったお陰で余計なことは考えずにすんだ。
けど、心の中にポッカリと穴が空いたような感じで、何をやってもそれが満たされることはなかった。
桜栄祭最終日の朝。
3日間続いた桜栄祭も今日で終わり。いつものように会議室に向かった。校舎内には生徒の姿がチラホラと見える。
「雄大!」
まだ静かな廊下に、明日香の声が響く。
自分を呼ぶ声に、本当ならすぐに振り返らなければならないのに、その声の主が分かっているだけになかなか出来ない。
「雄大?」
不安そうな声が心に痛む。