投稿小説が全て無料で読める書けるPiPi's World

魅惑のカテキョ。
【その他 恋愛小説】

魅惑のカテキョ。の最初へ 魅惑のカテキョ。 0 魅惑のカテキョ。 2 魅惑のカテキョ。の最後へ

魅惑のカテキョ。-1

「ねぇ、センセ…」

私が呼び掛けても、彼は大した反応も示さない。
ただ、一言…
「まだ、終わってないですよ。」
そう言って、口と手を動かし続ける。
「もう無理だって…」
その行為をやめる気配は、無い。

「ココを攻められるのは弱いんですね。」
そう言って、フッと彼は微笑む。
「もう…限界…」
目の前はチカチカして、頭の中は真っ白になる。

「もうすぐで、ラストですよ。」

【魅惑のカテキョ。】

「だあぁっ!!無理無理!」
私は、ペンを放り出して後ろにあるクッションへと倒れ込む。
頭の使いすぎか、もしくは目の使いすぎか。それか酸欠か。
横になり天井を見つめると、眉間ら辺が楽になる。
「あと一問じゃないですか…。」
そう言って彼は、仰向けになった私の顔を覗き込む。
整った眉を、困ったようにひそめながら、
「口はパクパク動くのに、さっきから手は動いてませんね。」
嫌味をサラリと口にする。
「だって、同じ様なトコばっかり…。」
目の前にある端正な顔を、目を細めて睨みつける。
「ええ。君は、ココが弱いでしょう。『三角関数を含む方程式・不等式』」
「う"…。」
サラッと突っ込まれ、私は何も言えずに顔をしかめる。
その様子を、彼はおかしそうに見つめると首の下に手を差し込んできた。
ヒンヤリとした手が首筋に当たる。
「さ、起きて下さい。続きをやりますよ。」
「ちょっとだけ休憩しようよー。」
背中に力を込め、起き上がれないように直立の姿勢を取る。
「ね、5分だけ。」
すると、諦めたかのように彼は潔く手を退いた。
優しくクッションの上へと降ろされる。
「5分だけですよ。」
そう言って立ち上がり、本棚の方へと歩みを進める。
自慢じゃないけど、この部屋に参考書とかは無い。
「漫画ばかりじゃないですか。」
その中の一冊を手に取り、ゆっくりとページを開く。
175cmを越えるであろうスラッとした体型には合わない大きく節くれた手は、先ほどから一定のペースで紙を捲る。
ゴロリ、と横向きになってその姿を見つめる。
どうしたんだって思うくらいに整った顔立ちに、少し長めの黒髪。眼鏡。
大学のサークルで日焼けしたという肌は、シミ一つ無い綺麗なモノだ。全く持って羨ましい。
性格は、まぁ優しいだろう。勉強以外で関わったことはないから、良く分からないけれど。
手足なんかこれみよがしに長いし、鼻なんて高いくせに小鼻だし。
口角はキュッと上がってる。これだけでも、優しそうな印象だけども。
(あれ…)
意外なことに、ピアスの穴がある。しかも、右耳に3つも。
銀と赤と…何かのカタチをしたピアスが、髪の間からチラリと見え隠れする。
(何か、そーゆー系には疎そうなのにな。)
細身のジーパンと重ね着からは、センスの良さが窺えるのは確かだけど。
でも。
(彼女はいないだろうな…。)
外見は良いけど、彼は女嫌いだと思う。それか、苦手か。
ここに来た最初の頃も、常に向かい合せで座っていたし。手が触れると急いで退いてたし。
(今となっては、密着だけどね。)
私から接近していくのだけど、女として見られていないのだろう。ふん。


魅惑のカテキョ。の最初へ 魅惑のカテキョ。 0 魅惑のカテキョ。 2 魅惑のカテキョ。の最後へ

名前変換フォーム

変換前の名前変換後の名前