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魅惑のカテキョ。
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魅惑のカテキョ。-2

「朱璃サン、見すぎですよ。」
ハッとして声のする方を見ると、彼はこっちを見ていたようだ。
意地悪そうにニヤっと笑った。
「惚れてしまっても、叶わぬ恋に終わりますからね。ダメですよ。」
「なっ…。」
「冗談ですよ。」
そう言って、フッと笑うと彼はまた本に視線を落とした。
私は、からかわれた事に対し少しむくれながら思い出す。
彼が来ると知った時のことを。

水無瀬 葵。私でも分かるような有名な大学に通う22歳。
初めは、カテキョなんて嫌で嫌で仕方なかった。
『今日から家庭教師が来るからね。』
しれっとした顔でそのような重大発言をした母親…思い出すだけでムカっとしてくる。
サボってやろうかと考えたけど…
『カッコいい若い人なのよ。』
蛙の子は蛙。所詮、私も年頃の女の子なのだった。

バサッ…
「え?」
音がした方に顔を向けると、彼は口元を手で覆っている。
足下には、さっきまで読んでいたであろう漫画。
慌てて、先生の所へと駆け寄る。
「どっ、どしたの先生…。」
「……か…」
か?かって何だ?
相変わらずうつ向いている彼の顔を覗き込もうとした、その瞬間…
ポタッ…
「…………血?」
フローリングの床に落ちた、一滴の赤い液体。明らか血だ。
もしかして…吐血?!
「ちょっ、先生!!大丈夫?!」
ウチは共働きだから今この時間に親はいない。
この状況で、(花の)女子高生は吐血した男の人に対し、どうやって対応すれば……
「過激過ぎる…」
…………は?
言った意味が分からなくて、足下に落ちた漫画を拾いあげ、ページを捲る。
(……まさか。)
チラリ、と先生の方を見る。
「もしかして、これ見て…」
兄妹が禁危を犯すと言う内容の漫画の、しかも絡み合う画が多い巻で。

「鼻血?」


「こんなの、読んじゃダメですよ…。」
鼻にティッシュを当てながら、彼は言った。
机の上には先ほどの漫画が置いてあり、私はふざけてページを捲る。
「うわっ、やめて下さいよ!」
慌てて顔を背ける彼を見て、我慢できずに笑ってしまった。
「先生、漫画なんてこんなのばっかだよ?」
そう言ってペラペラと捲る仕草をすると、先生は信じられないとでも言わんばかりに目を見開く。
「教育上、悪影響を与えかねませんね。」
「何真面目に語ってるのさ。」
漫画なんて、少しぐらいエロくないと売れないだろうし。特に、私達の世代には。
「興味がおありですか。」
「え?」
何をいきなり…しかも、めちゃくちゃ真面目な顔で見つめてくる。
何故か私の顔が熱い。掌もうっすら汗ばんできた。
「ある…けど…」
何正直に答えてんだ私!!
「いや…いや…」
中身は別として、見てくれの良い男の人にそんな事を聞かれると、緊張してしまう。
すると、彼はフッと微笑んでペンを手に持った。


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