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『二月二十八日の憂鬱』
【青春 恋愛小説】

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『二月二十八日の憂鬱』-2

だけど、彼女の口調とはうらはらに、顔は笑顔で、
「−でも、結果的には離れることになるけど、みんなでカラオケをすることは出来る。面と向かってあいさつは出来ないけど、心の中でおはようって言える。授業中に一緒に騒げないけど、休みの日にみんなで集まっていろんなコトが出来るよ」
言った。
先生をいじるのは…家の番号を探ってイタ電するとか?と悪戯っ子のように笑うのは、しっかりは聞けなかったけど。
だって、彼女はこんなにもみんなとの別れを惜しんでいるのに、でも一番のたいせつなコトをわかっていて。それに比べてオレはただ、迫り来る別れにただ別れが悪者だと配役を決めつけ、自分は悲劇のヒロインのようにただ何も信じず、待っていただけ。
そんなオレに、たいせつなコトを教えてくれたから。
そう考えると王子様は彼女だろう。立場が逆で情けないけど、オレを変えてくれたから。
けして別れたからって私たちは変わらないよ?だって私はみんなのこと好きだから。
そう、オレも三年間過ごした思い出はきっと色褪せたりなんかしないと信じるし、こいつらはたいせつな仲間だ。
オレはやっと顔を上げる。だけど、胸の痛みはまだ残ったままだ。だってやっぱり別れは悲しいから。
「だからみんなも同じなんだよきっと。でも、このノリは少し着いていけないよね…はは」
「あのさ」
でも、この痛みはみんなが大好きだという証拠。
だけど−。
「うん?」
彼女は名前を呼ばれたとき、かならず「うん?」と少し首を傾ける。
「ありがと」
「…うん」
その傾けたときに少し長めの、肩まである髪がさらりと揺れるのを見るといつもドキドキする。
そして、今照れ笑いをする彼女はストレートな感謝の言葉に弱いという情報だって収集済みだ。
変わらないものはないって、彼女から教えてもらったばかりで、少し図々しいけど、今は少し変わりたいって思う。
「あのさ、オレ−」
「…うん」
オレは息を吸う。臆病な男の一世一代の大場面だ。幸にも彼女は来ると思っているのか、少し俯いて、ほんのり頬を朱に染めている。
「オレ、出会ったときから君のコトー……」
「………」
じぃー。
………。違和感を感じ、おそるおそる後ろを振り返る。
そこにはいくつものいやらしい目線が刺さっていた。しかも、伴奏をほったらかしで唄っていない。……コイツら。
−そこでふと嫌な不安がよぎった。
もしかして彼女が恥ずかしそうに俯いてたのは、この野次馬たちの注目を浴びてたからで、そんな彼女をみたオレはもしかして彼女も昔から−と感じていたのはまるっきしの妄想!?
オレは落胆した。いつまでたってもこの心配性は直らないんだと肩を落とす。
でも、きっと二日後には言おうと思う。
『出会ったときから好きでした』と。
だって、彼女が一番大切な人だから−。

そう決心して目線を彼女に向けると、彼女も気にしていたらしくチラチラと様子を伺っていた。そんな彼女がやっぱり可愛くて好きだなーと顔が綻ぶ。
目があった、二人して照れ笑い。
「明日は忘れられない卒業式になりそうだね」
「だな」
やはりさっきの恥ずかしさあまり互いにぎこちない声。だけど考えてることは一緒で。
最後に彼女は二人にしか聞こえない声で。
「待ってるからね」
そう微笑んだ。


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