可愛い人。-2
「あたしの仕事…か。」
「うん。だから、そんな嫉妬すんな。」
「だからしてないってばぁ。」
「無理すんなって。俺が好きなのはお前だけだ。」
「…うん」
「だから安心して俺に抱かれろ。」
「な…によ、それ。」
クスクス笑う彼女の手を引いて、店を出た。
会社では出来るキャリアウーマンの彼女。
でも、そんな彼女も肩書きを取ればただの1人の女。
嫉妬もすれば、心配もするのだ。
「…はぁ、本当に可愛い。」
「ん-?」
お店を出ると、千晴は俺の腕に絡み付いてきた。
俺の顔を覗き込んできたから、そのまま唇を合わせる。
「ッん…要、こんな所で盛っちゃだめ。」
「ん-。」
「こらッ。」
彼女はビシッと俺の手を叩いた。
「じゃあ…ホテル行く?」
「う-…家まで我慢して?」
「ホテルイヤ?」
「イヤ…じゃないけど、ゆっくりしたいじゃない。明日休みだし…ね?」
「…わかった。」
「よし、イイ子。イイ子。」
彼女は俺の頭を数回撫でる。
「…我慢出来ない〜」
「はいはい。行きますよ-。」
彼女は俺を引きずるようにして、家へと足をすすめた。
―…
「ッん」
ガチャンと鍵を閉めた音が始まりの合図だった。
「か…なめッ…シャワー…」
「無理。ここまで我慢したんだ。」
キチンとアイロンのかけられたワイシャツの中に手を入れると、彼女の身体がピクンと反応する。
「やッここじゃ…だめッ」
「…さすがに玄関じゃまずいな。」
「当たり前でしょ?ベッド行こう。」
彼女はヒールの高いパンプスを脱いで、家に上がった。
「え、いいの?」
「…うん。いいよ。あたしも、要が欲しい。」
「やった。」
彼女は照れたように笑い、俺を呼ぶ。
「…早く。」
「…は-い」
男とは単純な生き物だ。好きな女にウィンクされただけで、雄が疼く。俺は彼女の後について寝室へ向かった。
彼女は寝室に俺を招き入れると、部屋の端にある照明だけ付け、電気を消した。
柔らかなオレンジのライトは、先日彼女との買い物で見つけたものだ。
「…それ、買って正解だな。」
「うん。悩んだ甲斐あったよ。」
彼女は俺のスーツを受け取り、ハンガーにかける。
「…ネクタイは?」
「うん。」
彼女はネクタイを外す俺をじっと見つめた。
「…やっぱり男の人がネクタイ外す姿ってかっこいい。」
「俺じゃなくても?」
「…ううん。要だから…」
彼女は嬉しい事を言ってくるもんだから、俺はもう我慢出来なくなって、夢中で彼女の唇に口付けた。
「ッ…」
キスをしながら彼女の上着を脱がす。
「ッはぁッ…」
唇が離れると、彼女から甘い吐息が洩れた。
「もッ…我慢しろなんて言わないからッ…焦らないで…」
涙目で潤んだ彼女の瞳が俺を映す。
余程苦しかったのか、息があがっている。
「うん…ごめん」
彼女は俺から上着を取ると、ハンガーにかけた。
「…焦らなくても、夜は長いのよ。」
キチンと俺の目を見て、彼女の妖艶な唇はそうつむぐ。
彼女の形のよい唇は俺を焦らし、強気な瞳は俺を惑わす。
彼女には本当に、
「…かなわないな」
俺は再び彼女に口付け、彼女をベッドへ沈めた。