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可愛い人。
【OL/お姉さん 官能小説】

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可愛い人。-1

―可愛い人。

「相馬さん、お疲れ様です。」
パソコンから目を離すと、湯気のたったコーヒーを持った彼女の姿があった。
「あぁ…千晴(ちはる)か。」
「“稲守(いなもり)”ですよ、副社長。」
仕事中ですからね、と彼女は微笑んだ。
「そうだったな。」
背もたれに寄りかかってネクタイを緩める。溜め息を溢しながら、彼女の淹れてくれたコーヒーに口をつけた。
「んまい。」
彼女の淹れるコーヒーは旨い。
「よかった。」
彼女は俺の背後にまわり、肩に手をかけた。
「…肩凝ってますね。」
「あぁ悪いな…」
「いえ。」
「…今日、残業は?」
「ないですよ。」
俺の肩を掴む彼女の手に、俺の手を重ねる。
「…デートしようか。久しぶりに。」
ちょっと驚いた顔をした彼女は、すぐに笑顔になった。
「…はい!!」
俺は本当に嬉しそうに微笑む彼女の後頭部に手を添え、彼女の唇に口付けた。


―可愛い人。


「え?秘書…?」
彼女は傾けたワイングラスを口につけず、そっとテーブルに置いた。
「うん、そう。来週から新しい秘書がつくんだ。」
彼女の飲もうとしていたワインは、決して高くはないが、値に合わず美味。
「そう…なんだ」
二人で入った店は、いつもの行きつけの店だった。いつもの一番奥のテーブルで、いつものワインといつもの料理に舌鼓をうつ。
「…女の子?」
エスカルゴのグリーンソースにフォークを刺すと、彼女が真剣な顔で尋ねてきた。
「うん。まだ若い女の子なんだと。」
「…ふ-ん」
何とも言えないような表情で、テーブルの上に視線を落とした。
「何、ヤキモチ?」
そんな彼女をからかうように、彼女に声をかける。
「そんなんじゃ…ない。ヤキモチやく年じゃないもの。仕事だって割りきれるし。」
彼女はくぃッとワイングラスを傾けた。彼女のむき出しになった白い喉が、ワインを飲む度にコクコクと動く。たったそれだけなのに、彼女から色気を感じた。
「はぁッ…ただ、ね」
グラスを唇から離す。空になったワイングラスに視線を落としながら彼女は言った。
「ただ、要(かなめ)と一緒にいられる時間が減っちゃうなぁ-って。」
仕事中は副社長、とか、相馬さん、と呼ぶ彼女は、デートの時は俺を名前で呼ぶ。
「…あぁ。それは、そうだな。」
悩ましげな瞳の彼女は、綺麗だ。
彼女から唇から紡ぎ出される自分の名前にでさえ、嫉妬してしまう程に。
「コーヒー、若い秘書さんが淹れてくれるものね。」
彼女はワインを一気に飲んだせいなのか、頬がほんのりと赤く染まっていた。
「肩もきっと揉んでくれるよ。」
彼女は、嫉妬している。新しい秘書に。
「…コーヒーも肩揉みも、全部お前にしかやらせないよ。」
「…ふふ。本当に?」
彼女は本当に可愛い。


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