続☆強引グマイウェイ-1
「よし、膝下5センチだな」
今、私は校門でスカートの長さを測られている。
それ自体は特別なことではない。
でも、一つ問題が。
っていうか、一人の問題児が。
真剣な眼差しで定規を見つめているのは、風紀委員でも先生でもない。
「靴下は白。髪どめは黒か茶だぞ」
むしろ、誰よりも厳しいチェックをするこの人は、私の彼氏。蒲原壮助。
自分は校則なんて完全無視のくせに。
髪は金だしピアスしてるし、特技兼趣味はケンカだし。
「何度も言うけど、ほんっとに嫌。いまどきスカート丈守る女子高生なんていないよ!?」
「オシャレなんて二人キリの時にすればいいだろ。それとも、お前は俺以外の男にも色目使う気なのか?」
犯罪者の目が光る。
もう恐いなんて思わないけれど、従わないとしつこいからな…
「…わかったよ」
教室にたどり着くまで、彼は私の肩を抱き、片っ端から男を睨みつける。
ちなみにこの習慣のおかげで、私に男友達はいなくなった。
蒲原くんはバカだし、束縛もひどい。
だけど、全力で守ってくれるし、愛してくれる。
私は彼が好きだ。
それは変わらない。
変わらないのだけど…
「じゃあ、帰りに迎えに来る」
私の教室の前に到着し、彼が言った。
「あ、ゴメン。今日は先に帰って」
「あ?なんでだよ」
「友達とカラオケの約束してるから」
「友達?何人だ?男はいんのか!?」
「…私入れて三人。男の子はいません」
「何時に帰宅する?」
「…9時くらい」
「ダメに決まってんだろーが!んな夜に出歩くな!!」
彼の怒声に学校中が静まり返る。
やばい…キレそう…
「おい!返事しろよ!」
ダメ…我慢しなきゃ…
「聞いてんのかコラ!」
ああ…限界。
「…るさい」
「あ?」
「うるさいんじゃボケ!この束縛男!!いつ帰ろうが私の勝手でしょ!!」
彼を上回る勢いでまくし立てた。
やっちゃった…
「なんだよ…心配してやったのに…」
やっぱり。
蒲原くんはどんな人にも盾突くような学校一の不良だけれど、私だけには敵わない。
私が怒ると泣きそうな顔をしてふて腐れてしまう。
「か、蒲原くん」
「もう知らねぇからな」
蒲原くんはまるで覇気の無い捨て台詞を残し、自分の教室に向かって行く。
言い過ぎたかな…
でも、悪いのは蒲原くんだし!
私は周りの好奇と恐怖の目を振り切り、教室の中へ入った。