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強引グマイウェイ
【コメディ 恋愛小説】

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強引グマイウェイ4-1

『コイ』
受話器の向こうの人物は、それだけ言い残して電話を切った。
慌ててかけ直しても、いっこうに繋がらない。
一方的な態度に少し呆れながら、その意味を考える。
恋。
故意。
鯉。
いろんなパターンがあるが、相手はあの蒲原壮助。
必然的に、命令形の『来い』だ。
でも、どこに?
とりあえず、私は宛もなく家を出た。
彼の行きそうな場所を訪ね、道行く人に問う。
「無駄にデカくてやたらに恐い顔の、ヤ○ザみたいな男、見ませんでした?」
すると、悲しくなるほど目撃情報が集まった。
何を勘違いされたのか、『気をつけてね!』なんて声をかけてくれる人も。
私の彼氏さんは一体…。
複雑な心境のまま、教えてもらった公園にむかう。
しかし、そこにたどり着いたとき、一瞬にして私の目は覚めた。
小さな公園のど真ん中で、大の字に横たわっている巨体が見えたのだ。
「蒲原くん!?」
急いでそこに駆け寄る。
血の滲む口の端。
腫れ上る左の瞼。
痣だらけの腕と、砂まみれの服。
茫然と、彼を抱きかかえる。
「…おせぇよ」
蒲原くんの声に、いつもの迫力はなかった。
「ど、どうしたの?」
「見りゃわかんだろ?ケンカだよ、ケンカ」
「でも、蒲原くんがこんな…そんなに大勢と?」
「いや、一人」
「じゃあ、なんで…」
蒲原くんは腕を押さえながら、ゆっくりと上半身を起こした。
彼がケンカで負けるなんて、考えられない。
それも、こんな風になるまで…。
「相手の男が、女連れてたんだよ」
ため息混じりに彼が言った。
その表情はいたって穏やかで、怒りや悔しさは感じられない。
「女の前で、恥かかせらんねぇだろ」
「…わざと負けたの?」
「負けたっつーな」
『勝った』とは到底思えない姿で、彼が口を挟む。
「蒲原くん、そんなに優しかったっけ?」
「うるせぇ。お前のせいだろ」
「私のせい?」
「お前と出会ってから、何でか余計なことまで考えちまう。もし、俺があの男の立場で、お前にボコボコにされてる姿見られたら…って思うと、手が出せなかったんだよ」
血を拭い、蒲原くんが立ち上がる。
夕日を背にした彼は、眩しいほどに輝いて見えた。
「ったくよぉ。お前のせいで、俺様の無敗伝説に傷が付いただろ?」
そんなことを言いながら、彼はどこか嬉しそうだ。
私の頬にも笑みが移る。
「立つの辛いでしょ?肩、掴んでいいよ」
「んなこと出来るか、カッコわりぃ」
カッコイイよ。
きっと、目の前でボコボコにされているのを見たとしても。
私にとって、蒲原くんはカッコイイ。


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