“オレ”第1話-1
オレは、深芳 奏(みよし かなで)。小さい頃から町内じゃ負けなしのガキ大将。生まれて十三年間、自分は最強の男だと信じ続けていた。
−そんなオレは、実は女だった。
『絶対行かねーからな!』朝から家のなかに響くハスキーな声。
『そんなもん着れるか!何で学ランじゃないんだよ!』
『馬鹿言わないでよ。あなたは女の子、あと“オレ”じゃなくて“私”でしょ。もう中学生なんだから直しなさい!』
渡される制服。胸のリボンと短めのスカートを見ると吐き気がする。
−五分後。
『あらー、あなたもやっぱり女の子ねー。』
制服に着替えた奏の姿を見て母親が感心していた。
『恥ずかしくて死ぬ・・
やっぱオレ行くの止め−』『早く行・き・な・さ・いっ!』
母親の剣幕。勝てるはずもなく、嫌々ながら学校へと向かうことにした奏。
この時、彼女(彼?)にはまだこれから起こる色々な事件を知る由はなかった。