淋しい嘘
〜私は誰も愛さない〜-4
「…私は5年2組のシバフの父テンと申しますけれど。あの、どうかされましたか?」
「いいえ何でもありません。もう結構ですので」
あああああああ、あのときのあのおとこ、ああああああああ
いけない、いけない、かえらなきゃ、おうちまで。
きっとだいじょうぶよ。わたしのことなんて、どうせおぼえてないから。もういい、もういいの。
今にも卒倒しそうな女を見て、男の口が無意識に、
「今、この辺りは大変物騒ですので、私でよろしければお送りしましょうか。車をすぐそばに止めてありますので」と言った。
「それはご親切にどうも。ですが、私は一人が一番安全なので」
・・・
「放して、帰して、止めて」…私は監禁されてしまった。
洋君、あたし死んでもいいかな。生きているのに疲れたよ。私は走行中に窓ガラスから外に出た。だんだんと意識が遠のいていった。
填編
女は急に倒れ、男は介抱した。この女、どうしようか。保健室に預けるか、近くの医院まで運ぶか…見たところ重病ではない。意識・呼吸・脈もあるようだ、すぐに目覚めそうに見えた。私の診療所まで運ぼうか。
男は思った。何故だかこの女を助けたいと…
カイラ編
ママ今日は何時に帰るんだろ。今日は珍しく授業参観に来てくれたんだし、ママの好きなお料理を作ってあげるね。
そして料理を作って三時間後には、一人で食べて床に就いていた。
ママは忙しいんだもん。お菓子をいっぱい食べて寝よう。
次の日もママは帰って来なかった。今まで黙って外泊したことのないママが…
界は黙って旅行か出張にでも行ったのだと思うことにした。
しかし、柱おじさんから電話がきて、急に嫌な考えが現実を帯びてきた。
柱おじさんは車で界の家に向かい、そのまま柱おじさんとあたしは警察に捜索届けを出した。
ママ、どこ?
パパ、誰?
あたし、一人?
これが生まれてからの界の疑問である。ママを失いたくはなかった。
一人になりたくなかった。
たとえ誰からも愛されなくとも。