=《蒼閃機甲バルトーク》= 〜第弐斬「すれ違う告白」〜-31
「………なんで今日言わなかったのよ……。」
「…………あれ?」
ヨソウガイデス。
このような場面では、"なんで黙ってたのよ…………"と言うのが普通では………?
だが、美月が言ったのは、"なんで今日言わなかったのか"、だ。
それに、こんな声色で言う美月もおかしい。
確かに、怒っていても不思議ではないが、美月の言い方は、真面目な怒り方ではない。
自棄(やけ)になった怒り方だ。
「あんたのせいで……………あんたのせいで……………。」
「ちょっ…………み、みずっ!」
最後の"き"を言えなかった。
美月が後ろから蒼真の首を絞めて、前後左右に振ったから。
思いっきり。
躊躇なく。
かなり。
暴走。
死。
「なんで今日言わなかったのよぉぉ〜〜〜〜っ!!あんたのせいで変な勘違いしちゃったじゃないぃぃ〜〜〜〜〜〜っ!!私の喜びの数時間返してよぉぉ〜〜〜〜〜〜っ!!」
「ちょっ…………み、美月………首、首〜〜〜〜〜〜っ!!!」
「死んでっ!!お願いだから一辺死んでっ!!私の満足いくまで死んでぇぇ〜〜〜〜っ!!!」
「や、やめ…………死んじゃう、ホント死んじゃうよ〜〜〜〜〜〜〜〜っ!!」
それでもサイシルド雌の攻撃は当たらない。
バルが必死でフォローしている。
お疲れ様ですバル。
「「はぁ……はぁ……はぁ……はぁ……。」」
肩で息をする二人。
なんとかこの修羅場は終結したが、これは和解による終結ではない。
疲労による終結だった。
「はぁ……はぁ……じょ、状況を読んでね、美月。」
「……………あんた、後で覚えてなさいよ。」
「(オレの人生…………短かったな………。)」
人生を振り返ってみる。
「コルァッ!!」
スパーンッ!!
「えぁっ!」
ハリセン、きた。
「何ボーッとしてんのよっ!」
「え!?」
「一週間前みたいに、さっさとアレ倒しなさい!」
「はいぃっ!」
一旦、サイシルド雌から離れる。
「じ、じゃぁ、絶対オレに触らないでね?」
「分かったわよっ。」
フンッと鼻をならし、美月は落ち着いた。
その顔が変に赤いのが、蒼真はついに気付かなかった。
「よし…………いくよ、バル。」
『うむ。』
蒼真はバルブレスのコネクタを伸ばした。
「"コントラクト《契約》"!」
バルに挿す。
操縦桿を変える。
そして………叫んだ。
「シフトアップ!!"蒼閃"!!バルッ!!」