刃に心《第16話・肝試し度胸試し》-7
「これはもしや、青春の象徴…告白」
「霞さん!ビデオはちゃんと回ってますか!?」
「ばっちりです!」
「ヒロシさん、ユウさん!楓さんと千代子さんをちゃんと押さえてますか!?」
「「ばっちりです」」
「「ムガー!!」」
「では、お静かに…♪青春の甘酸っぱい一時を共に見守りましょう♪」
朧は口許に人差し指を当てた。
「………私は……」
そんなギャラリーを知ってか知らずか、刃梛枷は自分の想いを言葉として紡ごうとする。
思わず、身を乗り出すギャラリー達。
しかし、その時だった。
「お〜い!!俺を一人にしないでくれよぉ〜」
背後の暗闇からそんな声と足音がする。
「げ…彼方先輩…」
「あわわわ…」
「ん?みんなそこにいたのか〜!」
目覚めて辺りに誰もいなかった為、寂しかったのだろう。
十分に放置プレイを楽しんだ彼方は朧達を見つけると嬉しそうに駆け寄っていった。
「寂しかったじゃないかぁ〜」
そして、竹藪目掛けて突っ込む。
「うわっ!?」
「な、何だ!?」
突如、竹藪から押し出された仲間達に驚き、疾風は頓狂な声を出した。
刃梛枷は口を閉ざすと無言でそれを見下ろした。
静かな殺気が仲間達の肌を刺激する。
「あ、あはは…」
希早紀が引きつった笑みを浮かべた。
「まあ、何となく理由…というか、そそのかした主犯は判ってるけど…」
疾風はそう言うと、浴衣から汚れを払っている朧に視線を投げ掛けた。
その視線に気付いた朧はにこ〜っと微笑む。
思わず、溜め息が零れた。
「まあ、済んだことだからいいですけど…」
「そうですよ♪殿方がうじうじと過去を引きずるのは見苦しいですからね♪」
さらに溜め息。
幸せが朧に吸い取られているように感じる。
「それはそうと…刃梛枷、何か言い掛けてたけど…」
ピキッ…と空気が変わった。時が止まる。
この場にいる全員が固唾を飲んだ。
「……何でもない…」
だが、刃梛枷は極めて冷静に答えた。先程までのほのかな朱は消え去り、元の無表情を貫いている。
「……何でもないから気にしないで…」
「そう?」
そう言われると、多少は気になったが皆がいる前で詳しく追及するのも気が引けた為、疾風はこれ以上問い質すことはしなかった。
「刃梛枷!」
唐突に楓が叫んだ。
刃梛枷は静かに振り向いた。