刃に心《第15話・奉り祭り》-4
「似合ってるよ」
「……可愛いと思う…?」
「ああ」
「………ありがとう……」
刃梛枷は俯きながら言った。
「さて、みんな来たみたいだから出発しま〜す♪」
人間と活気に満ち溢れた会場の中を10人はとりあえずぶらぶらと回ることにした。
「ねえ、シイタケ」
「なんだ?ヒロシもしくはユウ」
「ヒロシです。アレって前々から思うけど、かなりいい商売してるよね」
「綿菓子がか?」
「原材料ザラメ。なのに500円とかするんだよ。袋のデザインでいたいけな子供達を誘惑して買わせる。僕なら良心が痛んでとても出来ないけどね」
「コラ!祭りを否定するような発言をするな!」
「ねぇ、シイタケ」
「なんだ、ヒロシもしくはユウ?」
「ユウです。ヨーヨーって、すごいよね」
「何でだよ」
「だって、その場のノリで買ってもお祭りの終わった翌日には邪魔になるし、使い道無いし。まさにお祭りマジック。まあ、僕はやらないけどね」
「やらなきゃいいだけの話だろ!そういうことは胸の奥深くに終い込んで、永久に出すな!」
「まあまあ、しぃ君。そんなに怒っちゃダメだよ♪お祭りなんだから、無礼講で楽しまなきゃ♪」
「そ、そうかな…」
「そうだよ♪」
にっこりと笑う希早紀に武慶から怒りが消えていく。
「「グッジョブ」」
双子が親指を天に向ける。希早紀もよく判らないという顔をしながら同じポーズを返す。
「おぉっと、アレはお祭り名物、スナイパー気取りの集まるお店!射的ではないか!」
彼方が駆け出す。
「月路先輩、見ていて下さい!この田中彼方が何でも打ち落として差し上げよう!そして、貴方の心さえも打ち落として見せましょう!!」
厳つい店主に彼方が小銭を渡す。
銃身の横に取り付けられたレバーを引き、コルクの弾をギュウギュウと押し込んでいく。
「愛の狩人、田中彼方!行きます!」
ぱんぱんぱんぱんぱん。
計5発の弾丸を打ち尽くす。
「………」
何も落ちない。いや、掠りもしなかった。
彼方は静かに戻ってくる。
「さあ、一番手は誰だ?」
どうやら、無かったことにしようという魂胆らしい。
「僕がいく」
「ヒロシか?」
「ヒロシじゃない。ゴ○ゴと呼べ」
ヒロシは銃を構える。
銃口が狙うのは景品の中で一番デカい謎のプラモデル。
5発全部を箱の角に撃ち込む。
だが、箱はグラつくものの後一歩の所で止まった。
「任せた」
ヒロシはポイッとユウに銃を投げた。
「任された」
それを受け取ると同じ箇所に撃ち込む。
プラモデルは3発目で陥落した。