光の風 〈覚醒篇〉-6
「よし、行こう!」
立ち上がり、二人は千羅の待つ場所へとむかった。脚に絡む草が青い、明らかに空気が違う世界。それを肌で感じている。
僕はここに居たのか?
そんな思いを抱えながらも今は目の前の大仕事に向けて気を引き締めた。
今は眠る光の神。千羅達の話を聞くかぎりでは、彼は唯一無二の絶対的な存在だという。誰よりも強く、誰よりも優しい、誰よりも自分に厳しく、誰よりも責任感が強い。何より、誰よりも神々しく輝いているオーラがあるのだと。
誰よりも強い人物が何故封印なんかされ、眠っているのか日向が尋ねると千羅は静かに笑って答えた。
それは彼が誰よりも優しいからだと。
そんな絶対的な信頼を寄せられているのが光の神、今からまさに神を目覚めさせに行くのだ。
中庭の出口はアーケードの様なものだった。長く続くアーケードを抜ければ、そこはどこまでも天をめざす高い吹き抜けの大聖堂が姿を現した。
「うっわぁ〜…。」
思わず見上げ口を大きく空けたまま立ち尽くしてしまう。そんな日向に構う余裕もなく千羅と瑛琳はリュナを連れて祭壇の方へ足を進めていった。
慌てて二人を追い掛ける日向の耳に思いがけない声が聞こえてきた。
「千羅!?瑛琳!?」
大切にリュナを抱えてきた千羅と瑛琳の前に、貴未と軍服を来た紅奈が立っていた。信じられないものを見るような目で彼らは千羅達を見ている。
「リュナ!?」
千羅の腕の中にいるリュナを見つけると紅奈は真っ先に駆け付けた。この姿は紛れもなくあの嵐の日のまま、何を信じていいか分からずにただ駆け付けた。
そっと触れてみる。頬には涙の流れた跡、そして白いドレスには今も傷を忘れてはいない血の跡が確かに残っていた。確証はない、さっきまで確かに会話をしていた、それでも感覚で分かる。
彼女こそが本物のリュナ・ウィルサだ。
「紅奈!」
紅奈が振り替えるとそこには聖、ナル、そしてサルスと「リュナ」がいた。
「なんや?どないなってんねや?」
「オレにも分かんないけど、とりあえず皆連れてきた。」
リュナに扮していたレプリカがリュナに近付き、そっと頬に触れる。愛しい目でリュナを見ていた。
「やっと…お会いすることができました…リュナ様。」
その言葉に誰も口を挟むことができなかった。今まで偽り続けた彼女が初めて口にした真実のように聞こえたからだろう。
レプリカはリュナに一礼すると自身を煙でまとい、本来の姿を現した。リュナとは正反対の短い髪、青い瞳、印象も違う。それを見たサルスは聖に視線を向けた。