トラ恋!-3
「理香。着いたから私、帰るね。バイバイ。」
「ふぁ……ん〜、バイバ〜イ」
寝呆け眼(まなこ)で叶絵を見送る。
「やっぱ昼寝はいいわ〜〜」
ふと、バックミラーが目に映る。
乗客は二人。
私と、孝次。
私たちの家は結構な郊外に位置する。
ミラーに映る孝次は色々あって疲れたのだろう、目を瞑っている。
まぁ今日は球技大会もあったし。
降りたら労(ねぎら)いの言葉のひとつでもかけてやろうと思う。
バスは、穏やかな沈黙に包まれている。
バス停が見えてきた。
ゆっくりと減速していく。
後ろを向くとどうやら孝次はお目覚めの様子。
私もそうなのだが、通い慣れると感覚的に終点が近いことがわかる。
また目が合ったのですぐに顔を前に戻した。
それと同時にバスが止まり、扉が開く。
「ありがとうございましたっ」
「はい、また明日ね」
この年配のおじ(い)さんとも、もう一年半の仲だ。
バスから降りた勢いそのままに、私は歩き出す。
脇道に入って、家まであと10分といった所か。
郊外にも程があるだろ、おい。
こんな砂利道、乙女にはハードすぎるわ。
しばらく歩いて、体ごと後ろを向く。
孝次はぐったりした様子で俯き加減で歩いていた。
「お疲れ様!」
孝次は顔を上げる。
「疲れた……マジで疲れた……あいつら、有り得ねえよ……」
私は孝次と歩を並べる。