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トラ恋!
【学園物 恋愛小説】

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トラ恋!-2

「叶絵。そんなにあいつのこと好き?」

「好きだよ。」

叶絵は目線をコート内の孝次に向けたまま、『当たり前』という感じで言った。

私は叶絵と目線を併せる。


「あいつと話したことある?」

「……私がそんなことできると思う?」


……そう。
実は、叶絵は“超" が付く程の恥ずかしがり屋さんなのだ。

でも見た目はかなりいい線をいってると思う。
背は小さいが、色白で羨ましい位に綺麗な黒髪だし、顔だって整っている。

ただ、その大人しすぎる性格が邪魔をしているのか、男子からの人気はあまり無い。
友達も、私くらいなものじゃないだろうか。

と言う私の方も、本当の、という事項にチェックを入れるなら叶絵一人しか友達はいない。
他の子はあの騒がしいところがどうも苦手だ。
普通に話す分には問題無いのだけど。


「今度、あいつに叶絵のこと話してみようかな……」

どうやら私の呟きは黄色い声援に掻き消され、叶絵の耳には届かなかったようだ。

私は、叶絵のことが大好きだ。

幸せになってもらいたいと本気で思っている。

今日の帰り、叶絵のことを孝次に話してみようかしら。




放課後━━

叶絵と私は家の方角が一緒にだということで、登下校は同じバスを利用している。
ちなみに孝次と私の家は隣同士なので、もちろん孝次も同じバスだ。

一番前、運転手の真後ろの席が私たちの指定席。

バスに揺られる中、私の隣で叶絵はさっきからチラチラと後ろばかり気にしている。
後ろでは、見るに耐えない光景が広がっているのだろう。

その後部座席に目を向けてみる。

女子…いや、♀達に囲まれる孝次。

もっと嫌そうな顔をすればいいのに。
だが孝次は元来そういうことをはっきり言えない性格なので、質問に首だけで答える程度の抵抗しかできない。

孝次と目が合ったので私は元の位置に顔を戻す。

なんだか泣きたそうな目だった。
私に助けを求められても困る。
私とあんたはただの幼馴染み。

叶絵は……私と会話を交わす余裕など無さそうだ。
することもないし、こんな見慣れた景色を眺めてても何にもならない。

結論。
黙って寝ましょう。
睡眠は世界を救うのだ。

ぐー。


―…


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