School days 04-1
明るい茶の、背の中程まである髪があたしのトレードマーク。
「不良女」、「遊び人」、「軽い奴」
あたしは学校でそう呼ばれてる。勿論面と向かって言うヤツなんかいない。陰でこそこそ言ってんだ。
否定はしない。確かに男友達は多いし、エッチだって何度もしたことある。
でもあたしは遊んでる訳じゃ無い。気に入った人とエッチして何が悪いの?どうせ誰とやったって同じなんだし。
あたし、光木梨衣(みつきりい)。高校二年生やってる。始めに言ったように、あたしはそーゆー印象の生徒だ。でも悪いけど、そこらの奴らよりは頭はいい。一応学年5番までには軽く入るし?だから先公達も、髪を染めててもそんな厳しく言わない。校則では禁止なのにね。
「はーぁ」
あたしは屋上で溜息をついた。学校なんて怠い。
ちなみに今は5限目の授業中。いわゆるサボリってやつね。
確かホームルームじゃなかったっけ。そんなの余計怠い。それにあたしがいたって邪魔なだけでしょ。
―キーンコーンカーンコーン…
授業の終わりの合図だ。でも眠いな…、二月のくせに今日は暖かいし。―…いいや、午後サボろう。
あたしは地面に横になる。
青い空がどこまでも続いていた。
寒くなって目が覚める。目前に広がる空がオレンジだ。野球部の声がグラウンドから響いている。
「もう夕方かー…」
あたしは身を起こし、制服を掃って教室へと向かった。
廊下を歩くあたしを沈みかけた太陽が照らす。落ちるあたしの影。
なんだかそこだけ闇が潜んでいる気がして、あたしは足を速めた。
―ガラッ
教室の戸を開ける。誰もいない。あたしは窓際の席に腰掛けて、グランドを眺めた。
夕日に照らされ、活動する部員達。無性に心にジンとくる。綺麗な光景。青春てヤツね…
「そこ、俺の席なんですけど」
振り返る。ドアにプリントの束を持った男が立っていた。
柿沢名継(かきざわなつぐ)。うちのクラスの学級委員だ。
あたしは黙って立ち上がる。早く帰ろ。
「あ、光木さんホームルームいなかったっしょ?」
去りかけたあたしに奴の声。
「球技大会の種目決めたんだけど、バレーで良かった?」
「…なんでもいーよ。どうせ出ないから」
あたしは背中で答える。
「なんで。クラスみんなで出なきゃ意味ないだろ?」
何コイツ。なんでそんなきれいゴト言える訳?
「いいよ、んなこと無理に言わなくても」
奴の方を向いて続ける。
「あたしが色々言われてるの知ってるでしょ?みんなこんな女と一緒にいたくないのよ」
「そうかな」
は?
「やっぱり同じクラスの仲間だし、出てくれた方がみんな嬉しいと思うよ?」
何言ってんの?
コイツおかしい…
恐い…
キモチワルイ…
「止めてよ!」
思わず声が大きくなる。
「いい加減にしてよね、そーゆーきれいゴトって吐き気すんの!」
キッと柿沢を睨む。
「あんたみたいな奴って大嫌いなのよ!!」
息が切れる。叫び過ぎたかな…
あたしは、くるりと柿沢に背を向けた。
「…待てよ」
低い声。こんな声だったっけ…?
振り向く私。薄暗くなった教室。奴が外した眼鏡がキラッと光を弾いた。
「ホントの俺も知んないくせに、何言ってんの?」
圧倒されて何も言えないあたし。ゆっくり近づいて来る柿沢。…動けない。
「じゃーさ、俺も、汚してよ…?」
―ぐいっ!
!?訳が分からなくなった。背に壁が当たる。唇に柔らかい感覚。掴まれた手首が痛い。
「…っやめてよ…っ!」
出せる限りの力で柿沢を押し退ける。
ガタンッ
柿沢が机にぶつかる。
「―…ってーな…」
俯き加減で私を睨む。
「何すんだよ」
「それ、あたしの台詞よ」
再び柿沢が近づく。壁に手を付き覗き込む奴。柿沢は長身だ。180くらいあるだろう。それが更に威厳を漂わせていた。