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舞い斬る華
【ファンタジー 恋愛小説】

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舞い斬る華 番外 椿の過去編-3

騙されたといっても、うまく法をパスしてギュっと一家の首を絞める不当な負債。
いそいで真っ当なローン会社に負債を移すも、その額は莫大

母は一人、遅くまで仕事を掛け持ちして家計を支えようとした

弟も少しでも家のためにとバイトをした…

彼は幸せだった家族が一気に突き落とされた現状に…
そして、信頼していた彼女のひどい仕打ちに…
それに騙されて自分の彼女のせいで苦しめることになってしまった家族へ…
この状況が実際家族を襲っているのに、まだどこか彼女を追ってしまっていた自分に…

悲しみ、落胆、別の哀しみ、怒り、と様々な思いが立ち込めた

彼は自分を責めた

しかし借金は彼もバイトしたところでどうにかなるような甘っちょろい額ではない


彼は家族のためと、大学を出てからの予定だったのを早めてプロライセンスを取り
初めて賞金の出る新人類だけの剣術の試合に参加することになった。

しかし、プロの洗礼は厳しかった。
アマチュアで戦っていた彼に、プロの中で戦ったきた者たちのスキルは大きな壁になった。

それでも彼は大会をビッチリスケジュールに入れて異常なほど早い上達をし、
持ち前の力を発揮しだしていた。

2回、3回と勝ち続けれるようになるうちに段々と賞金も増え、負債も僅かながらではあるが減ってきた。

そしてもう一試合勝てば順位での賞金も手に入って一気に楽になる!という準決勝の舞台までたどり着いた。
彼は意気込んで受付を済ませた。

そして待合室に入ろうとした。

そこで……あの忘れもしない声が微かに聞こえることに彼は気づいた。

「あいつの弱点は……」
「ああ…分かってる。その練習はしてきたさ。あんなやつにまけねぇよ」
「ん♪頑張ってねダーリン♪」

そう言ってその控え室から出てきた女と目が合う。

「ぁ…」

女は彼を見て震え上がった。

そこには、毎日のように優しい笑顔をみせていた男が、恐ろしい形相で睨み付け、涙を流している顔があった。

彼女は鬼を見たような恐怖に引きつった顔で走り逃げていった。


彼は彼女を追えなかった。

彼の中では恋は終わっていた。

しかし、何もいえなかった。

何も出来ず、ただ様々な思いを胸に涙していた。

彼はそれでも試合に出た。


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