舞い斬る華 番外 シルディアの過去編-1
これはシルディアの過去の出来事…
生まれて今までのことをシルディアの記憶にちょっとお邪魔して、一緒に振り返ってみましょう…
この過去を知って、あなたはもっとシルディアに思い入れが出来るでしょう。
ただし……
もしかしたら、あなたはその過去を知ってシルディアから引いてしまうかもしれません…
それでも良いのなら…
彼女の過去を知る覚悟が出来たのなら…
この先をお読み下さい。
…
…
それはシルディアと名前のつく前の赤ん坊がこの世に生を授かった日。
お産婆さんは生まれたばかりの赤子の指に傷を付ける
「ぉぉ…新人類じゃ…」
そう、新人類が発見されて増加を続けていた当時でも、産まれてくるまでは普通の人間か新人類か分からないのだ。
この頃は既に新人類も世間に良い意識で認識されていて、新人類であることは名誉でもあった。
赤子の父は新人類のアメリカ人
母は日本ではないが、アジア系の綺麗な顔立ちの普通の人間だった。
新人類と新人類が子を宿せばだいたいは新人類にはなるが、片方だけだとその可能性は薄い。
普通の人間と普通の人間よりは可能性は多いが、それでも新人類が生まれる率は2割程度である。
父も母も喜んだ。
彼女は望まれて産まれてきた幸せな子どもであった。
父は国の仕事で世界を駆け巡っていた。
子が生まれ、安定してくるまでの数年は母と3人で暮らしていたが、その子が大きくなるにつれ父はまた遠出をして家を空ける日が多くなった。
母は普通の生活をしていたため、彼女のことも普通に育てようとしていた。
お金の面ではなに不自由なく、むしろ父の働きで裕福な部類だった。
彼女は、それこそ新人類特有の体で怪我もせず、病気一つ無くすくすくと育った。
そして普通に育ち幼稚園に入り…
ここまでは順調だった。
しかし世間が認めていても、小さな子どもはやはり残酷でいて
数少ない新人類を気持ち悪がったり怖がったりと、風当たりは良くなかった…
当然、仲間外れやいじめを受ける度、彼女は泣いて帰ってきた。
母親はどうにかしようと彼女と二人で話し合ったり、夫と相談したりしてあれこれ試した。
しかし、彼女はすでにクラスに馴染める状況ではなく、いじめもエスカレートしていった