舞い斬る華 番外 シルディアの過去編-4
彼女は母がどんどん冷たくなっていくのをギュッと握った掌から感じていた…
その感触を一生彼女は忘れることはないだろう。
彼女はまだ幼いながらも理解していた。
自分の身代わりに母は殺されたのだ
自分が産まれてきたから母は苦しみ、そしてその命まで落とすことになってしまったのだと…
彼女は自分を呪った
自分の特殊な体を
自分の存在を…
彼女の瞳から生きる力が消えた
…彼女は自塞した。
心を閉ざした…
そして翌日、国外に居た父が事件と妻の死を知らされ帰国した。
父は嘆いた
声にならない泣き声をあげて妻の死を悲しんだ
近くに居られなかった自分を悔んだ
そしてなにより、自分たちが追っていた組織の末端が我が国に…我が家にきていたことに、悲しみ…怒り…あらゆる負の感情を感じた…
父は荒れた
彼は自分達新人類のためにと、愛する妻や我が娘のためにと、新人類を売買したり人体実験したりという最悪の組織を探し、潰しと世界を走り回っていた。
その組織に…妻が殺され…娘が壊された…
どれほとの苦しみだろうか…
どれほとの悲しみだろうか…
どん底というほどの絶望を味わった父は、荒れ果て、地に落ちた生活を始めた。。。
無駄に貯金だけを食いつぶす生活が2年続いた。
父の堕落ぶりもひどかったが、彼女も暗い暗い小学校生活を続けた
あの事件のことで誰も話しかけもしなくなったし、彼女ももっともっと深く奥底に沈みこんでしまっていることで、誰も寄せつけない雰囲気を発していた。
そして彼女は、何かを思いあの日、母を守ろうとして手にとった日本刀に数年ぶりに手をかけた。
鞘を外して、輝く刃に映った自分のことを見る。
彼女は非力な自分を憎んだ、
まだ幼い女の子は
その年齢では当たり前のように細い腕を、その力の無い弱々しい自分を憎んだ。