悪霊の作り方-5
その者は喜んで礼をいった。
そして、逸る気持ちを抑えるようにして、私に説明を始める。
どうやら、この世の一部の物は触ることが出来るようで、ソレを使って二次的に他のものに触れたりも可能のようだ。
その者はもういらないからと、布のような生地をポケットから取り出すと私にくれた。
どうやらこの布はその触れる一部の存在らしい。
しかも、この布に関しては、あの世のものを織り込んで闇で手に入れたとかいうもので、持ってる間は生きた人からは見えないらしい。
その布が簡単な説明の後、私の手の上にふわっと乗る。
「前に見たんだがあまり派手なことやってバレると強制でその場で地獄行きみたいだからな
何かするならバレないようにこっそりやんだぞ!」
その者は最後にそう言い残すとスイスイと上へと上って行った。。
振り返ると、性行為というまでではないがお互いを求め合っている二人。
私はこの布で何かが出来ないかと考えた
…
まず、この空気を壊したい…
この二人を止めたい…
目の前で重なる二人に、布を使って机の上のマイクを持って背中でも殴りつけたい衝動に駆られたが、
少し冷静に気付かれずにどうにかできないかとあたりを見渡す。
そしてハっと思いたったように部屋の受話器をそっと持ち上げる。
受話器の向こうから店員が呼びかけるが、当然こちらは無言
そのまま待っていると、店員がドアの窓から覗き込みノックして入ってくる。
それに驚き慌てて離れる二人。
店員はスミマセンと頭を下げつつ、ドアのすぐ隣の受話器を見る。
その時にはもう私は手から離していて、受話器はなんともない状態。
そして軽くその受話器の不具合を説明して、お邪魔しましたとばかりに店員は出て行く。
思ったとおりに雰囲気は壊れた。
そして二人はしばしの沈黙の後に、またといって帰路についた。
私はその時には既に彼を彼女に渡したくはないという思いで満ちていた。