俺と俺様な彼女 〜11〜-3
手作り、手作り、チロル・・・泣くな、数馬。男は泣いちゃだめなんだ。・・・でも汗ならいいよな?うん、汗ならいいさ。そう、これは汗なんだ。
箱を開けてみる。
結衣のはいわゆるトリュフと呼ばれるものだった。やわらかくてうまい。そんなに甘くはなかった。ビターか?そういや憲一甘いもの苦手だったよな。よかったな、憲一。愛されてて。
八重ちゃんのはチョコクッキーだった。形はいびつだったがそれがまた手作り感に溢れててよかった。それに味はとてもよかった。八重ちゃん、クリスマスの時といい、お菓子作るのうまいな。
そして・・・だめだ、涙で前が見えねぇ。それに見たら心の中のなにか大切なものを失くしてしまう気がする。何でバレンタインでこんな気持ちを・・・。辛い、辛すぎるよ。人生ってこんなに厳しいの?俺知らなかったよ。
ピ、ポ、パ・・プルルル 気づいたら俺は憲一に電話していた。
「もしもし?」
「うっ、うう、け、憲一〜。」
「泣くなよ、数馬。そうか、もらえなかったか。残念だったな。あの先輩だからしょうがないよ。」
「ち、ちが・・げほっげほっ・・うんだ。」
「何だ?何言ってるのかよくわかんねーよ。」
「も、もらえたんだよ。」
「なんだよ、びっくりさせんなよ。うれし泣きかよ〜。よかったな。悪いが惚気聞く気はないから切るぞ。」
「ち、チロルなんだよ。」
「は?何?」
「せ、先輩がくれたの、ぐす、チロルチョコ一個なんだ。うっ、うぇっ」
「・・・」ぶちっ、ツーツーツー
ピ、プルルルル がちゃ
「なんで切るんだよぉぉぉーーー!!!」
「無理だよ!!これは予想外どころか発想すらできねーよ!慰めの言葉も思い浮かばねーよ。」
「げんいぢ〜、俺はもうだめだ〜。」
「ま、待て、はやまるな。生きてたらきっといいことあるから!!ちょっ、ちょっと待ってろ。」がちゃ
バタン「数馬、落ち着け、な?」
「うう、来てくれてありがとう。俺の友達はお前だけだ〜。」
「で、その、先輩がくれたチョコってのは?」
「うっ、うっ、…それだ。」
「・・・マジかよ。」
「俺はもう誰も信じねえ。」
「いや、これは違うって。いくら月宮先輩でもこんなことまではしないって。」
「じゃあなんでこんなことするんだよ?」
「それは、まぁ、なんだ、ほら。」
「うわぁぁぁーーー」
「落ち着けって。男が泣いても武器にはならんぞ、な?」
「ああ、ぐすっ・・・すまん、少し落ち着いた。」
「よし、じゃあ先輩に電話してみろ。」
「やだ。今回はさすがにキレた。」
「この前の喧嘩とどっちが上だ?」
「ある意味今回のほうが上だ。」
「そうか、まあとりあえず忘れろ。それが一番いい。」
「ああ、もうこうなったら先輩ごと忘れてやる。」
「冷静になれって。ちょっと考えてみろ。絶対なんか理由があるって。」
「知るか。」
「はぁ。まあいい。じゃあ俺は帰るから。」
「ああ、わざわざすまんな。」
「それはいいが・・・まぁ、また明日な。」 バタン
「なんだよ、チロルって。意味わかんねぇよ。」
「数馬〜、ご飯だから降りてきなさい。」
「ああ、今行く。」
「どうしたの?怖い顔して?」
「別に。なんでもない。」
「そう?まあいいわ。」