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いつかの紙ヒコーキ
【純愛 恋愛小説】

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いつかの紙ヒコーキ-1

あの日吹いた風は、どこに行ってしまったのだろう?
新しい風に生まれ変わって、生まれ変わってまた、俺を包んでいてくれているのだろうか?

昨日折った紙飛行機は空を飛んではくれなかった。

俺はいつかまた、あの時の紙飛行機のように未来へと飛べるのだろうか



〜一年前〜

六月

「吉田君」
俺の名前を呼ぶ担任の声、俺が振り替えると、担任が心配そうな目をして立っていた。
「あなた進路は決まったの?」
これで何度目の台詞だろうか。いい加減耳にタコというやつだ。
まあ、自分の進路を用紙に書いて提出しなければならないのだが、俺だけはまだ出していなかったので、それもしかたない。
「すいません、まだです」
いつものように返す俺。
「いい?明日までだからね」
「はい」
進路なんて決まっている。家の家計じゃ大学には行けない、就職しかないことくらいはわかっているし、でも何故か自分を決め付けたくなかった。

それから俺は家に帰る、そしていつものように仏壇に線香をあげる。
仏壇に置いてある父の笑顔の写真がいつも目について離れなかった。

あれから何年経つだろうか、父が死んでから、いや自らの命を断ってから。


優しかった父、大好きだった父、だけど俺が小学校五年生だったころに死んだ。
父の勤める会社で、上司から失敗の責任を全て押しつけられ首になった。
そしてこの世に絶望し、母と幼かった俺を残して・・・
トラウマや心の傷なんて言葉を使って、不幸自慢をするつもりはないが、それから俺は、必ず人と一定の距離を取るようになってた。

「勇介、帰ってきてたの?」
「ただいま」
母はあれから女手一つで俺を育ててくれた。苦労してきたせいか39歳のわりには老けて見える。
「学校から電話があって、あなたまだ進路の用紙提出していないんだって?」
「ああ、明日提出するよ。」
「行きたかったら大学に行ってもいいのよ、奨学金だってあるし」
「いや、いいよ。俺、就職して母さんのこと助けるから」
俺がそう笑顔で言うと、母は複雑な表情をしてみせた。悲しみや嬉しさ、同情や申し訳なさ、あらゆる感情が入り交じっている。そんな気がした。

部屋へと戻り、俺は進路の用紙に就職希望と書いた。それをカバンに入れた後、近くに置いてあるノートを破る。
そしてそのノートの切れ端で紙飛行機を折った。
ベッドに座りながら飛ばしてみると、紙飛行機は真っすぐに飛んだ。
だけど、やがて部屋の壁に当たって墜落した。


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