彼の手の中<特別編>-2
「まだ付き合ったばっかりだったし、その…」
「俺はあの頃より咲智のこと好きなのに」
宮川はチョコレートを紙袋の中に戻し、私の手を握った。
「日に日に、どんどん好きになってくよ。咲智は違うの?」
宮川が本当の子供みたいにふて腐れているから、私はついに吹き出してしまった。
「怒られるどころか笑われてる…」
宮川の言葉にますます笑いが止まらなくなる。
「ぷ…違うくない…よ」
「…信用できない…」
私も宮川と同じ。冷めるどころか好きになっていく一方。こういう面を知る度に。
「嫌だよ、あれも」
笑いを噛み殺し、チョコレートの入った紙袋を指差す。
「本当?」
「本当」
「俺のこと好き?」
「…それは言いたくない」
「ほら、咲智は恥ずかしがり屋だからさ、あんまり『好き』って言ってくれないじゃん。だから怒ってくれたりすることで愛情確認してるの、俺」
「そうなの?」
「だから、ちゃんと怒って。今後は」
「…わかった」
謎の約束に満足したらしい宮川は、手をかたく繋ぎ直して歩き始めた。
「じゃあ…私もお願いしていい?」
「何?」
「これからも私がプレゼントあげたら、ちゃんと泣きそうになって」
「…格好悪いけどね」
宮川は少し屈んで、私に誓いのキスをした。