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彼の手の中
【学園物 恋愛小説】

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彼の手の中<特別編>-1

デートもケンカもその他諸々、おおよそ恋人らしいことはしてきたつもりでいる。
でも、いまだに彼は理解不能だ。
「何で!」
私は思わずそう叫んでいた。
今日はバレンタイン。記念日も料理も苦手な私だけれど、宮川の喜ぶ顔が見たくて頑張って手作りのチョコレートを渡した。
なのに、開けてみるように言ったら、彼は『やだ』の一言で。
「早くしろ!」
「やだよ」
「だから、何で?」
「感動して泣いちゃったら、格好悪いから」
真面目に答える宮川に、私は言葉を詰まらせた。
よくもまぁそんな台詞をさらりと…
堪らずに彼の手からそれを奪う。
「私が開ける」
「あぁ、ダメだって」
包装紙をビリビリに破り、中からそれを取り出す。
「はい」
わざとぶっきらぼうにそれを差し出した。
「…ほんとに泣きそう」
宮川は、ちっとも泣きそうじゃない顔でそう呟く。彼は感情が表に出にくく、付き合い始めはそれが原因で悩まされたりもしたものだった。
「食べるね」
やたら慎重にトリュフを一つつまむ。
「…どう?」
「百点」
「かえって嘘くさい…」
「本当だよ。俺、咲智には嘘つかないもん」
じゃあ、他の人には?とは聞かないでおく。なんか怖いから。
でも、一つ。絶対に聞いておきたいことがある。
「宮川、それは何?」
彼の左手にぶら下がっている、大きな紙袋。予想はついているが、あえて聞く。
「体操着…」
「私には嘘つかないんだよね?」
「チョコです。ごめんなさい」
宮川は珍しくキレのいい動きで頭を下げる。
「でも、知らないうちに机の中とか棚の中に入ってて、返しようが無かったんだよ」
「…まぁ、いいよ。バレンタインだし」
普段の告白などはきっぱり断ってくれているのを知っているので、今日くらいは大目に見る。
「ショック」
私が自分自身に感心していると、宮川のそんな声が聞こえた。
「怒ってくれないの?」
「は?怒られたいの?」
私が驚いて尋ねると、宮川はおもむろに紙袋を漁りだした。
「この入れ物、可愛いね」
他の子からのチョコレートを持って、彼が言う。
「…そうだね」
私が戸惑いながら応えると、宮川はしばらく黙り込み、それを開いた。
「あーおいしー」
チョコレートを食べながら、彼が抑揚なく述べる。
「…ヤキモチ妬かせたいの?」
私の質問を無視して食べ続ける。
「子供じゃん…」
「彼氏だよ」
ピタリと手を止め、すかさず訂正する宮川。
「前は俺が手紙貰っただけで、泣きながら怒ってくれたのにね」
「あ、あれは…」
過去の失態を思い出して恥ずかしくなる。


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