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『STRIKE!!』
【スポーツ 官能小説】

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『SWING UP!!』(第1話〜第6話)-64

(でも、ワンマンチーム……というわけじゃ、なさそうだな)
 そういう実力のあるものがチームを立ち上げ、エースで4番を張っている。そうなれば当然、このチームは彼が全ての“ワンマンチーム”になるはずだ。だが、彼のほかにも動きのいい選手はいる。
(あの三塁手の人、なかなかいい動きをしている)
 “岡崎”と、掲示板では表記されているサードの選手のきびきびとした足の運びや送球の鋭さを見た大和は、並ならぬセンスを彼に感じた。
「プレイボール!」
 試合が始まった。大和も桜子も、プレートを踏みしめて大きく振りかぶった雄太の第一球を、静かに見守る。
(………)
 どちらかといえば、投手としては恰幅のいい雄太の体格だが、足の上がりから始まるモーションには窮屈さがない。むしろ、柔軟に見える体の動きがスムーズな回転運動を生み、左腕の振りを鋭くしていた。

 パンッ!

「ストライク!」
 小気味のいい音が、響く。横から見ても、綺麗な筋を描いた直球は、かれがコントロールに優れた投手であることを大和に気づかせた。
「ストライク、ツー!!」
 それを証立てするように、二球目も審判の腕を迷いなく高々と上げさせている。勝敗に大きな結果の差が生まれる大一番だというのに、マウンドの雄太はとても冷静に見えた。
「!」
 三球目、これまでとは違う球筋が雄太の指先から放たれた。それは、直球のものよりも遥かに勢いの緩いボールではあったが、まるで弧を描くようにして高い位置から低い位置へと沈んでいった。
「ストライク! バッターアウト!!」
 その変化についていけず、享和大学の1番打者は無様な空振りをしてしまう。
(カーブか)
 変化の軌跡はまさにカーブのものだった。しかし、その曲がりや沈み方は、一般的なカーブよりも、鋭くて大きい。
「ストライク! バッターアウト!!」
 どうやらこのカーブが、屋久杉雄太にとってはウィニングショットになっているのだろう。続く二番打者も、ストレートでカウントを整えてから例のカーブを投じて、今度は見逃しの三振に切って取った。
「ナイスピッチ!!」
 桜子が両手を叩き、雄太の鮮やかな二者連続奪三振に歓喜している。
「アウト! チェンジ!」
 クリーンアップを前にしても、雄太のリズムは乱れを生じなかった。二球目のカーブに手を出した相手3番打者の打球は、三塁横の平凡なゴロとなり、それを岡崎が難なく捌いて、1回の表は三者凡退に切って取った。
「すごい、すごーい!」
 ぱちぱちぱち、と桜子の歓喜は止まらない。
(確かに……すごいな)
 その落ち着いたマウンド捌きが生むリズムのよさに、大和は双葉大学の“強さ”の一端を見た思いがしていた。
 絶好の滑り出しは、ナインの緊張を解きほぐす。試合前の強張った他のナインたちの表情は和らいだものになり、ベンチに戻ってくる際の軽快な足取りを見ても、双葉大学のメンバーたちは充分な落ち着きを得ていた。
「栄村! 頼んだぜ!」
 タオルで汗を拭いながら、雄太はベンチの真ん前に陣取り、1番打者の栄村に声をかける。その栄村が右打席に入り、構えを取ると、享和大の投手はモーションを始めた。
(相手は、横手投げか)
 こちらも、コントロール重視の投手らしい。初球、二球目と、勢いはやや屋久杉の球に劣るものの、コースを丁寧に突いているようで、栄村は立て続けにそれを見逃し、追い込まれたところで凡打に倒れた。鈍い当たりのセカンドゴロになったそれを見るに、おそらくはボール球に手を出したのだろう。


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