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『STRIKE!!』
【スポーツ 官能小説】

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『SWING UP!!』(第1話〜第6話)-196

「今までで、一番よかったかも……」
 大和の腕枕にくるまれながら、まだ朦朧とした様子で桜子が言う。汗やその他の分泌液でしとどに濡らしてしまったベッドを使うのは躊躇われたので、二人は、床の上に新たに用意した敷布団の上で、まどろみの時を過ごしていた。
 横になってしまえば、5センチほど存在する身長差は関係がない。細いながらも筋肉質な彼の腕と胸の中に身を預け、桜子は体の中に残る悦びの余韻を愉しんでいる。
「僕も、だよ……」
 これまでに感じたことのない、強い満足感。それに浸っていたのは、大和も同様であった。
 自分の思うままに、桜子のことを愛することが出来た。それは、雌を征服したいという雄としての充足がなされたからだと言い換えることも出来る。相手を“征服”することは、“絶対の関係”を構築することであり、いささか強引な論理ではあるが、強固な信頼関係の締結に繋がる。 …もちろん、同意の上でこそ、その論理が成り立つことを、ここに付け加えておく。
(本当に、気持ち良かった)
 初めて契った葵との間では、ついに届くことがなかった領域に辿り着いた気もするのである。心に線を引いたままの触れ合いとは違う、真なる意味での融合を、腕の中で丸まっている少女と果たすことが出来たと…。
「まだ、頭がぼーっとしてるよ……」
 そんな大和に甘えるように、体を寄せてくる桜子。それを受け止めて、大和はその髪を優しく何度も撫でた。
「やりすぎたと、思うけど……」
 半ば、襲い押し倒す形で始まった情事である。
 雰囲気もおざなりに、強引に抱かれることを悦ぶ女子は、いないだろう。しかも、盛り上がった最中とはいえ、尻にスパンキングを交えたといのだから、後から考えると実にとんでもない話である。
「ん……でも、いいよ……」
 しかし、桜子はそれを許していた。その行為の全てが、自分だけに向けられた彼の情愛の形であるとわかっているからだ。
 確かに、尻を叩かれた時はすこぶる驚いた。しかし、自分を痛めつける荒々しさはなく、むしろ、愛らしいものをめでるような優しさを大和の手のひらに感じた。
(ちょっと、クセになりそうだったし……)
 ぺちぺちといたぶられている時、恥ずかしさと共に背筋を走った感覚がある。 何処かノスタルジックな情感を交えたそれは、またいつか味わってみたい気にさせる“危うい心地よさ”を含んでいた。
 幼い頃、いたずらを叱られる時は、剥き出しにされたお尻を由梨に叩かれたものだ。セピアの色に霞んだ記憶が、尻を叩かれることで甦ったのかもしれない。
『んっ、んぅっ! あぁんっ、あんっ、あぁぁあぁぁぁ!!』
 その由梨が、隣の部屋で相変わらず愉しげに叫んでいた。お隣は早々と第二ラウンドに突入しており、まだまだ収まる様子もないらしい。
『あぁん! もっと……ッッ! もっと、ください! もっとぉッッ!!』
 まるでこちらを挑発するように、由梨の悶絶は続く。
『そっちは一回で終わり? うふふん。こっちは、まだまだこれからよ!』
 そう言われているような気がしてならない二人であった。
「ねえ……」
 まどろみから醒めた桜子の瞳が、艶を帯びた。吐息にも熱いものが混ざり、触れ合う肌にじっとりとした汗ばみを感じる。
「あ、あの……」
 熱くなった太股が絡みついてきた。詮索するまでもなくそれは、誘いをかけてくる意思の表れである。今までの彼女にはなかったものだ。
「大丈夫?」
「うん……」
 その気になっているのは、大和も同じである。あれだけの艶声を聞かされていれば、否が応にも昂ぶってしまう。
 実の話、隣の睦言を二人で耳にしたのは、この夜が初めてではない。それどころか、桜子の部屋に泊まった日は、例外なく耳に入ってきたものだ。しかし、それでも尚、大和は桜子に手を出そうとはしなかった。


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