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『STRIKE!!』
【スポーツ 官能小説】

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『SWING UP!!』(第1話〜第6話)-180

(濡れてきちゃった……)
 その激しさに想いを馳せることで、抑え込んでいたはずの劣情が京子の中で燻りを始めた。汗とは違うモノが体の奥から滲み出て、ショーツに沁みこんでいくのがはっきりとわかるぐらいに…。
(どうしよう……って、自分でするしかないんだけど……)
 夫がいない間は、極秘で入手した極太イボつきバイブが京子の夜を慰めてくれる。しかし、自慰の後に起こるどうしようもない寂寥は如何ともしがたい。それでも、催した性を処理するには、自分で自分を慰めるより他はないのだ。当然だが、夫以外の男は京子の眼中にはない。
「京子さん?」
「はっ……!」
 今度は自分が妄想に浸っていた。
「あはは……。あ〜あ、桜子がうらやましいなぁ」
「?」
「やっぱり、好きな人とはいつも一緒にいたいもの」
「そう、ですね……」
 確かに大和とはほとんど毎日顔をあわせている。それでも、セックスの間が空くようになった最近は、“いつも”とはいえない気もする桜子である。
 しかし、一度シーズンが始まってしまえば、夫の不在が多くなる京子に比べると遥かに恵まれているのは確かだ。千葉マリンブルーズは今、福岡ファルコンズとの敵地三連戦を皮切りに、長期の遠征期間に入ったため、夫・幸次郎の帰還は二週間後になると聞いている。
「早く、赤ちゃんできないかなぁ」
「えっ」
 組んだ両手の上に頬を載せながら発した京子の何気ない一言。それは、桜子を少し驚かせた。
「考えてるんですか?」
「うん」
 京子が“赤ちゃん”について言及したのは、これが初めてかもしれない。口に出すことがなかったので、ひょっとしたら積極的ではないのかと思い、桜子も今まで聴かなかったのだが。
「そのつもりで、危ない日とか計算してさ。ガンガン“生”でしてるんだけど……」
 まだ、その兆候はないらしい。
 結婚してしばらくは、二人きりの時間を満喫したい想いもあって、危険日の辺りに限り避妊はしていた。それが、子供をつくると互いに意志を確認しあってからは、そのリミッターを完全に外し、危険日であろうとなかろうと、夫の精をそのままたっぷりと胎内に迎え入れるようになっている。
「まあ、その気になったのが、3ヶ月ぐらい前の話だから」
 受胎の結果が体調に顕れてくるには、もう少しだけ時間が必要であろう。
「あんたたちは、ちゃんと避妊しないとダメよ」
「わ、わかってます!」
 結局、からかわれることになってしまった。
「じゃあ、あたい行くね。ありがと、話し相手になってくれて」
「あ、ううん。こっちこそ」
 しかし、それで京子が抱えている寂しさを紛らわせることが出来るのなら、本望なことでもあった。自分の周りにいる人たちが、笑顔でいてくれれば、人は幸せになれるものだ。


「いらっしゃいませ!」
 城央市にあるバッティングセンター・“豪快一打”に、大和はいた。それも、客としてではなく、そこで働くスタッフの服装をしている。
 なぜなら、大和のバイト先が、この“豪快一打”であるからだ。
『夏休みの間でもいいから、ウチで働かないか? ちょっと人手が欲しくてね』
 店長である風祭からそういう電話があったのは、大学が夏期休暇に入る1週間ぐらい前のことだった。
 “豪快一打”は、風祭とその細君と、彼女の弟が従業員となっている。時々、前の店長である細君の父親がヘルプで店に入ることもあるが、そういう場合は連休などで客足が増える時のことで、大体は2〜3人が店に常駐していれば事が足りる。
 だが、夏休みになると平日から客足が伸び、また、指導を頼んでくる少年たちも増えるので、風祭としてはもう一人、それも、野球に詳しいスタッフを確保しておきたいと考えていた。


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