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『STRIKE!!』
【スポーツ 官能小説】

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『SWING UP!!』(第1話〜第6話)-18

「忙しい身分やのに、ようきてくれたな。嬉しいで、原田」
「いや。俺にとって“ドラフターズ”は、ひとつの愉しみだからな」
 立場上どうしても時間が取りにくく、原田が練習に参加できる機会は少ない。それでも、試合のあるときはこうやって必ず顔を出してくれる。それだけではなく、二ヶ月に一度、市内の草野球チーム同士が作った“草球会”という集まりで行われる定例会には、スケジュールを併せて必ずチームの代表である龍介と共に参加し、そのブレーンを務めるので、ドラフターズの中ではいつのまにか“ナンバー2”というべき存在にもなっていた。
 余談で恐縮だが、今日の大会はその“草球会”の主催による。それぞれのチームが正規に出しあっている会費を元に、かなり大掛かりな表彰と景品を用意しているので、参加するチームの士気はなかなかに高いものであった。
「おはようッス、リーダー」
「おはようございます、蓬莱さん」
 次々と他の仲間たちが加わってきて、新参入の桜子を含め、総勢11名のドラフターズが出揃う。
「? 桜子、どうしたの?」
 しかし、何か落ち着かない様子で、誰かを探すように視線を周囲に散らしている桜子に、京子が疑問符を投げかけた。
「あ、いえ、あの……」
 珍しく歯切れの悪い桜子。一瞬、トイレにでも行きたくなったのかと京子は思ったが……それは、違った。
「ああ、そうだ。頼まれていたユニフォーム、もって来たぜ。背番号は取りあえず、空き番の“1”にしといた」
「おお、おおきに」
「? それは?」
 京子は、新村と龍介の会話にも反応する。そんな視線を受け止める形で、龍介は新しいユニフォームの事情を説明した。
「いや、な。実は今日、桜子のボーイフレンドが飛び入りでチームに入るんよ」
「そうなんですか?」
「急に決めた話やから、言いそびれてしもうた。えらい、申し訳ない」
「いえ、大将の決めたことだから……って、桜子のボーイフレンド!?」
 忙しなく表情が変わり、大きな声を出す京子。滅多なことで動揺しない、肝の据わった彼女の狼狽しきったその声音に、今度はドラフターズの面々が反応した。
「な、なによなによ! 桜子ってば、いつの間に!?」
「ち、違うよう! 友達、友達だってばッ!!」
「ハハァ……だから、あんなにきょろきょろして……」
「京子さん、聞いてよッ!」
 180センチを優に越え、チーム内でも原田に次ぐ長身の桜子だが、のぼせあがったように顔を真っ赤に染め、必死の弁明に務める姿は何処か萎縮しているように見えた。
 そんな様子を、声を殺して笑うドラフターズの面々。桜子の陽気で前向きなところは、彼らにとって非常に好感を抱かせていたから、チームの中で桜子は早くもマスコットのような存在になっていた。
「あっ」
 困ったように目線を漂わせていた桜子が、何かを見つける。瞬間、その背を更に大きく伸ばし、手を振った。
「草薙君!」
 グラウンドのざわめきを突き抜ける、爽快で豪快な声。何事につけ、彼女はパワフルこのうえない。
「おお、あれが桜子ちゃんのボーイフレンド……」
「175ぐらいかな。線が、割と細いようだが…」
「へぇ……なかなか、ジャ○ーズ・ボゥイじゃないの。桜子って、意外と面食いだったんだねえ」
「………」
 早速入る、外野の茶々。特に京子を中心としたその攻撃に晒されながら、桜子はあまり意識をしないようにして、大和を出迎えた。
「おはよう、蓬莱さん」
「うん! おはよう」
「みなさんも、おはようございます。は、はじめまして……」
 すぐに、桜子の周囲にいる同じユニフォームの面々にも頭を下げる。
「ほう」
「ふむ」
「あら」
 小柄な顔のつくりと、整った目鼻立ち。そして、純粋さに透き通った色合いが綺麗な瞳。少しばかり逞しさに欠けるところはあるが、穏やかで、優しそうで、そして聡明な印象を与える少年の表情であった。


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