『SWING UP!!』(第1話〜第6話)-179
ごふっ…
お茶を口に含みながら京子の言葉を待っていた桜子は、前触れもなく振られた話の内容に思わずそれを吹きそうになって、慌てて飲み込んだ。
「い、いきなり、何を!?」
「だって、気になるじゃない。“妹”の恋愛はさ」
「………」
確かに京子には、肉親に近い愛情でもって可愛がってもらっている。
「で、さ。ラブラブ?」
そして、妹は姉に頭があがらないのが一般の図式だ。
「あ、あの……は、はい」
桜子は顔に朱を散らせながら、頷いていた。なにやら指先をもごもごする仕種は、照れ隠しに良く使われる行動である。
京子の目には、それが愛らしく映った。
「もう、やったんだよね?」
ぼっ…
「あらら。ふふっ」
答えは顔に出た。ほんのりと散っていた朱色が、今度は鮮やかな紅色に変化して桜子の顔を覆っている。
「うっふっふ。そっかぁ。桜子も、大人になったんだねぇ」
乙女から女への門を通り抜けたと知れば、妹としての愛らしさにくるまれていた桜子の雰囲気に、麗しさが見えてくるから人の意識は不思議なものである。
「どう? すっごい、気持ちいいでしょ?」
それならとばかりに、京子は遠慮もなく閨事の妙味を聞いてきた。
「あ、あ、う、うぅ……。は、はい……」
桜子は茹だって湯気でも出てきそうなほどに顔を紅くしているが、それでも京子の問いに真面目に考えて、しかも答えを返す。
「草薙君、上手なのねぇ」
「きょ、京子さん!」
もう勘弁してっ、とばかりに真っ赤な顔で軽い非難を飛ばす桜子であったが、京子はなおも容赦がない。
「いろいろ、してもらってるよね?」
「う……うん……」
これまで、大和と愛しあった回数は二桁を超えている。さらに、昇りつめる時の体位も四つは経験している。初めて契って以来ここ数ヶ月の間に、かなり性的に練られているのは間違いがなく、それによって気持ちよさも乗倍的に増えているのは確かだ。絶頂を極めすぎて、失神することさえあった。
二人が体を合せる体位で圧倒的に多いのは“正常位”だ。それで、大和の胴回りを内股で抱き締めながら、絡みつくようにして腰をぶつけ合う。そのままの体勢で果てを越えるときもあれば、快楽を極めようとするところで“座位”に移り、真下から突き上げられる刺激によって絶頂を迎えることも多い。その二つの体位を合せたセックスが、今のところ大和と桜子の定番と言えるだろう。
背中から抱き締められるようにして、大和に貫かれる体位も何度か経験した。
繋がって淫靡に出し入れされているところを真下に見ながら気をやったこともある。大和に全てを委ね、後ろから突かれる甘い衝撃と、濡れ光ったものが自分の中を生き物のように前後している様子を見せられる羞恥とが絡み合うこの体勢は桜子を凄まじい快楽に誘い、喘ぎ悶え叫んで、思い切り“潮”を吹いてしまったことも…。
「もしもーし」
「は、はい!?」
淫靡な妄想にいつのまにか沈んでいた。目の前でひらひらと手を振っている京子の頬が、からかうように緩んでいる。
「………」
不意に、京子の顔が物欲しそうな表情に変わった。
(思い出して愉しめるぐらい、よくしてくれるんだ……)
夫の幸次郎は、遠征に出かけて久しい。故に京子は、お預けの状態が続いているのである。
(あっ……)
じゅ…
(や、やば……思い出したら……)
しばらくは打ち止めになる“最後の夜”は、そのため猛烈に燃えた。お互い、子供をつくろうと確認しあっているから、遠慮なく生身の性器を濡らしあいぶつけ合い、溢れ出る熱い精の迸りを胎内で受け止めながら、何度も何度も互いの官能を炸裂させたのだ。