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『STRIKE!!』
【スポーツ 官能小説】

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『SWING UP!!』(第1話〜第6話)-175

「んくっ……! あ、あぅ……! あふっ……!」
 寄せては返す、快楽の波。悶えるように身を震わせて、桜子はタオルを噛み締めた。
「んんんっっ………!!」
 挙げそうになる嬌声は、溢れる唾液に代わって口内を満たした。当然、その中に捩じ込んだタオルに唾液は滲んでいく。大和の所有物であるタオルに、自分の体液を沁みこませるその行為は、雌ネコのマーキングにも似ているだろうか。
「……ん……ふぅ……」
 上下の口から発情の証を垂れ流し、桜子は絶頂の余韻に悶えた。
「ふ……はぁぅ……」
 やがて、全身を覆った絶頂の硬直から解き放たれ、桜子は脱力する。
「………」
 最頂点に達したはずの昂ぶりが、まるで糸を切られた操り人形のように一気に降下していた。
自慰の最中には気持ち良かったショーツのにじみが、今は実に不快である。
「ん……はぁ……」
 咥えていたタオルを口から離す。とろり、と己の唾液が糸を引いた。
「あぅ……」
 楕円状に沁みこんだそれを見ると、桜子はひどい罪悪感に見舞われてしまった。
「なんてこと……」
 それは、自分の所有物ではない。恋人とはいえ、自分とは違う誰かの汗と香りが沁みこんだタオルを、口いっぱいに頬張った行為は、常軌を逸したことだと自覚できる。
(こんなこと……。タオルの匂い嗅いで……。それを咥えて、オナニーだなんて……)
 間接的なスキンシップにしても、度が過ぎているだろう。自分でも異常だと思う。こんなことをしていたと大和に知られたら、嫌われるかもしれない。
「は、早く……帰ろうっと……」
 自慰をしていたときには見えなかった現実も、桜子を不安にさせた。ここがプライベートな空間ではなく、他の誰かが脚を運んでも何ら不思議ではない場所であることにようやく気がついたのである。
(鍵もかかってるし……。誰も、来ないはずだけどね……)
 鍵を預かっている雄太や品子はともかく、それを持たない他の部員たちがこの場所に来ることはないだろう。そういう意味では、自分の心配は杞憂に過ぎないはずだ。
(タオル、ちゃんと洗って返さないと……)
 咥えて唾液をしみこませたままのそれを、彼に渡すわけにもいかない。
 愛蜜で濡れた股間を自分のタオルで綺麗にし、使っていない部分で全身の汗を拭う。しかし、ショーツには自慰の名残がべっとりと染みこんでいて、短時間では乾きそうもない。
(替えのパンツ……持ってくればよかったな……)
 濡れたショーツの冷たさに辟易としながらも、それを脱ぐわけにもいかなかった。今日の私服はやや短めのスカートなので、下着をつけないまま街を歩こうものなら、下手をすれば今度は“露出行為”を晒すことになる。これでは本当に、変態である。
「よし、帰ろう!」
 甘ったるい空気をその場に残して、桜子は部室を後にした。後ろめたい気持ちを振り切るように、駆け足でその場を去っていった。
「………」
 そんな自分の背中を追いかけている視線があったこと…。それに桜子は、とうとう気がつかなかった。


 確かに、ほとんどの部員たちが帰省している今の時期、部室には誰も来ないだろう。地元に近い雄太や品子なら脚を運ぶ可能性もあるが、二人は只今、旅行中である。従って、誰も部室に立ち寄るはずがないという桜子の考えは、間違っていない。
 しかし彼女は、あるひとつの可能性が存在していることに気が付かなかった。その可能性が生み出した結果が、今、部室の前に立っている人影である。
「………」
 それは、大和であった。バッグの中にタオルがないと気付いた彼は、置き忘れるとすれば部室以外に考えられず、それで取りに戻ってきたというわけである。
タオルの持ち主が、それに気付いて戻ってくる可能性。それを、桜子は完全に失念していた。そのために、大和のタオルを使って自慰をしていたところを見られてしまったのである。
(まさか、あんなことを……)
 部室の前まで戻ってきたとき、時間は随分と過ぎていたから、桜子はもういないだろうと考えていた。
 ところが、中に人の気配があった。さらに鍵もかかっていたから、大和は桜子がまだ中にいて、しかも着替えの最中だと思ったので、大和はとりあえずノックをしようとした。
 その瞬間だった。


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