『SWING UP!!』(第1話〜第6話)-123
「好きだよ。桜子さん……」
「うん……大和くん……」
考えるまでもなく、理由は明らかであった。そう呼んで欲しかったのだ。
名字はその人の家をさすが、名前はその人個人を指す。それを相手の唇から言葉として発せられるということは、相手にとっての自分の名前が、特別なものになったという証になるだろう。
桜子は、大和の“特別”になりたかったのだ。名前の中でも。
「桜子さん……桜子……」
「あぁ……」
何度も名を呼ばれるたびに、桜子の胸が熱くなる。どうしようもないほどの愛しさが溢れ出して、それを言葉に出して解放しないと、どうにかなってしまいそうだった。
「大和くん……好き……好き……」
だから、口にしていた。彼の名を呼んで、彼の名に想いを預けて……。
そして、互いの名を紡いだ唇に更なる愛しさをのせて、二人は何度もくちづけを交わした。
「………」
やはり、止められそうにない。深く深く、桜子の呼吸を吸い込むように深く唇を重ねていた大和はそれを遠ざけると、濡れてゆれている桜子の眼差しを真摯に受け止めながら……、
「欲しいんだ」
と、言った。
「………」
かなり抽象的な意味の言葉である。だがしかし、桜子には充分に通じていた。
顔を真っ赤にして、柔らかな頬を朱で一杯にして……
「うん……」
彼女は、頷いてくれた。
「ん、んんっ……あ……」
受け入れてくれたことへの感謝を唇で彼女に伝えてから、頬を撫でていた大和の右手が不意にあらぬ方向へと出向いた。
「は、きゃっ……!」
胸の膨らみに圧力がかかったかと思うと、それが玉虫色のような刺激のうねりを発した。
大和の右手が、桜子の豊かな乳房を愛撫したのだ。下から持ち上げるようにして、丁寧で優しい愛撫に胸の形が変わる。
「あ、あっ……あ、ん……」
唇や首筋へのキス以上に、体を走る電流が激しくなった。まるでポンプで空気を押し込まれているように、甘い痺れが胸から全身に注ぎ込まれる。
「ああぁ……ん、んぁっ……」
慣れない刺激に、桜子の体が無意識に捩った。それを逃すまいと、大和は左手で彼女の体を支えるように抱き締め、右手の圧迫を少しだけ強めた。
「く、はぁっ!」
呼吸が、激しくなった。それは声帯も強く震わせ、喘ぎと化して大和の耳膜に伝わってくる。
「桜子さん……」
「あ、あっ……や、大和、くん……ん、んんんっ!」
揉み上げの運動がその間隔を早めたかと思うと、今度はその輪が狭まっていくように乳房を移動していく。
くにっ……
「は、ああぁぁ――――……!」
刺激が集まってきた頭頂部を摘み上げられた瞬間、桜子は大声を出しそうになって口を抑えた。そうしないと、隣に聞こえてしまうと思ったからだ。
「ふっ、くっ、ん、んふっ!」
乳首からジンジンと湧き出してくる強烈な痺れ。口元を抑えていても、その指の間から漏れるようにして、桜子の喘ぎが音律を刻んでいた。
くにっ、くにっ……むにゅ、むにゅり……
「はっ、ふぅっ、んふっ、ふぅっ!」
乳首と乳房を交互に愛されて、肺胞が全て管楽器になったように甘い響を桜子の気管から溢れさせる。口元を抑えていても、その効果は程が知れていた。
「ん、んんっ、んんん――――……ッッッ!!!」
左の胸も、愛撫の対象になったのだから。
大和は桜子の体を完全に胸の下に伏せると、両手を使って豊満な胸にむしゃぶりついていた。