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Cross Destiny
【ファンタジー その他小説】

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Cross Destiny
〜神竜の牙〜B
-3

「かつての話を知っているか?」
「・・・いや」
「数年前にあったヒーティアとリィズの戦争、ヒーティア軍10万に対してリィズ軍は17万。戦局はヒーティアが不利だった。しかし黄泉羽が突如ヒーティア軍に加勢した。そしてリィズ軍は一ヶ月で6万の兵を失ったんだ。その犠牲はたった八人の黄泉羽によるものだったそうだ。」
「嘘だろ!?」
「嘘じゃねえ!
そして通常の兵士による犠牲も合わせると10万を越えたそうだ。
そうして最終的にヒーティアは勝利をおさめた。」
「・・・すげえ」
「そして黄泉羽と渡り合ったお前達にはそれと同等の力がある筈だ。
人知を越えた力の持ち主の前で軍の数など意味を成さない。
それはお前達自身もなんとなく気付いてるんじゃねえのか?」
その話を聞いて浮かない顔をするアルス。
「つまり俺達に数万人の人を殺せってことか?」
「・・・・・そうだ、ここで負けるわけにはいかねえからな」
「それに傭兵ってのはそういうもんだ」
ヴェイルのその言葉にアルスは顔を強張らせた。
「確かに傭兵を始めようと決めたとき、ジェラルドに手を貸すと決めたとき、ある程度の覚悟はした。
だが平然と万単位の人を殺せなんて言われて納得できるか!」
そして強い口調で叫んだ。
「ならどうする?戦いを止めるか?
そうすればアレスターの思うがままだ。フォルツがこちらにいる以上神竜復活は無くとも、魔物の大量投入によってジェラルドが魔物で埋め尽くされれば最終的には億単位の犠牲が出る。」
「・・・」
「誰かがやらなくちゃならねえんだ!!そしてそれができるのはお前達しかいねえんだ!!」
「解ったよ・・・・・だがアレスターの企みの話が偽りだった時は・・・」
アルスはデェルフェムートに微かな殺気を放つ。
「貴様!!閣下に向かって!!」
それに気付いたヴェザードは怒りをあらわにして大剣を抜いた。
「よせヴェザード!!いい」
「・・・・・申し訳ございません」
しかしデェルフェムートがヴェザードをなだめた。
「もし俺が戦に勝利するためにお前達を騙してるってんならこの命・・・お前にくれてやらあ!」
「・・・・・わかった」
アルスはデェルフェムートの覚悟を受け止め、自分でも覚悟を決めた。
そして・・・ヴェイルとフォルツもまた。

そうしてジェラルド軍とヒーティア軍が交戦しているという、ハロルの都へと足を運ばせる。
ハロルの都はレヴェンド大陸の中央から東よりの場所にあり、現在地の王都からは数百キロ離れている。

城に待機することを命じられ少し不満げなルナを後にして、三人はそれぞれ馬を走らせる。
「ハイヨー!!」
馬の尻を子どものにようにはしゃいで叩くヴェイル。
「なんでそんなにテンション高いんだよ?」
なぜかご機嫌なヴェイルをアルスとフォルツは不思議そうに見る。
「いやあ別にい」
「・・・」
そして薄笑いを浮かべるヴェイルが妙に気持ち悪かった。
「ところでさ、何でアレスターはとっとと魔物を投入させないのかな?魔物を兵隊として投入させれば神竜の力なんて借りなくてもジェラルドを倒せるんじゃないのか?」
フォルツはさっき思った疑問を今頃投げ掛けた。
「そんなことをしたら苦労してジェラルドに罪を被せたことが無意味になる。
あくまでアレスターの目的はホーリィの国民の信頼を失わずにジェラルドを滅ぼすことなんだろ」
その問いにアルスが答える。
「お前・・・・・頭いいな!」
するとフォルツが尊敬の眼差をアルスに向けた。
「あのなあ、話聞いてれば普通に解るだろ。」
アルスは逆に見下すような目でフォルツを見た。
「なーんだその目は!?そんな目で見るなー」


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