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『STRIKE!!』
【スポーツ 官能小説】

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『STRIKE!!』(全9話)-81

 かぽーん………。風呂場では、なぜかよくこの擬音が使われる。それはさておき。
 土地柄、山の幸をふんだんに取り入れた夕餉をご馳走になってから、玲子たち女性陣は湯船の住人となっていた。
「ンー……。まさか、温泉があるとは思っても見ませんでした」
 湯につかりながら嬉しそうに伸びをするのはエレナである。彼女の言うとおり、この民宿には、小さいながらも温泉が湧き出しており、それを囲むようにして風呂場が備えつけられている。
 4,5人も中にはいればすぐに一杯になってしまうので、男女わけにすることはできないようだが、それゆえに“混浴上等”となっている。
 ただ、当たり前だが、今回は時間枠を設けて男女別々に使用していた。そしていまは女性陣が先にこの温泉の恩恵にあずかっているというわけだ。
「監督、この温泉が目当てだったんでしょ?」
 晶の指摘だ。
「そうね。5・6年ぐらい前に、友達何人かと来たことがあって。小さいけれど落ち着いたいい雰囲気があるし、料理も美味しいし……すっごくいいところだったから、それからも時々来ていたの。おかげで、善三さんにも、杉乃さんにも、名前を覚えられちゃった」
「へえ………キャプテンと一緒に来たことも?」
 からかうつもりで問い掛けたのだが、
「うん」
 即答されてしまった。
「おふたりとも、さすがに彼のことは覚えてなかったみたいだけど」
 口元を軽く抑えて、微笑む玲子。この人の可愛らしさというものは、天然素材純度100%で出来ているのだろう。ちょっと、うらやましい。
「晶ちゃんも、今度は木戸君と二人できてみたらいいんじゃない?」
「そ、そうですね」
 玲子の口から亮の名前が出ると、それは何かの予兆である。
「ちゃんと、愛してもらってる?」
 それきた。晶は慣れているはずなのに、“愛”という言葉に照れてしまう。
 その様子で玲子には充分通じたようだ。
「んー、大丈夫みたいね。それでも、やっぱり、例のごとく“おあずけ期間”はあるんでしょ?」
「え、ええ……」
 試合前3日は、亮の部屋に泊まらずに、性的接触も避ける。それは、新年度を迎えてからもきっちりと守られている。
「木戸君もよくやるわよね。私たちもね、試してみたんだけど、3日はちょっと無理だったわ」
「そうなんですか?」
 キャプテンの忍耐力が、そんなに弱いとは思えないが。
「私がね、ダメだったの。2日目に、もう襲ってた」
「………」
「ひとりエッチは、イッたあとにすごーく寂しくなるからあんまり好きじゃないのよね。やっぱり、好きな人と肌を合わせないと、気持ちいいことも半分ぐらいになっちゃう」
「は、はあ……」
 その言い分、よくわかる。なにしろ、同じことを感じているのだから。
 玲子いわく“おあずけ期間”の中で、どうしても情欲を持て余したときは、ひとりでそれを慰めるより他はない。従って晶も、亮との情交を想像して夜中にひとり指を濡らしたことは数多い。
 だが、果てた後に残る寂寥感は、自慰をしたことを後悔させるほどに強いものだった。
「エレナはどうなの?」
 玲子は、湯船から上半身を出して涼んでいたエレナに話を振る。何も覆い隠さないダイナマイトバストは、湯によって薄桃色に火照っており、そのおおきな丘陵を伝う水滴とあいまって、艶かしさをたたえている。
 改めてそれを見た晶は、脱衣所のときと同じように瞠目してしまう。
(で、でかいのに……)
 大きいバストは、形が崩れやすいものだ。しかし、スポーツに通暁しているためか、張りがあり形もよいそれは、晶にとっては強い羨望と深い絶望を同時に抱かせる、いわば精神に効果を及ぼす凶器だった。


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