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『STRIKE!!』
【スポーツ 官能小説】

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『STRIKE!!』(全9話)-80

「おー! 玲チャン、ようきたのう!!」
 やたら元気のいい声が、真っ先に玲子を出迎えた。たたたた、と廊下を早足で渡る音がしたかと思うと、跳ねるようにして小柄な老人が目の前に現れた。杉乃同様、皺の目立つ顔だが、つやつやとした血色が、彼の元気のよさを物語る。
「善三さん、しばらくでした」
 玲子もまた、嬉しそうに頭を下げた。
「おお、おお。こやつらが玲子ちゃんの子分どもか! うむ、うむ。みな、なかなかええ面構えをしとる!」
 善三は、しきりにかぶりを縦に振っていた。
「すぐ飯にするかね? もう、あらかた用意はできとるんじゃ」
「ん……と……」
 玲子は視線をメンバーに送る。皆、何も言わず頷いた。ひとり、晶に支えられている亮はぐったりして俯いたままだったが。
 晶の心配そうな視線に、玲子は思わず苦笑する。彼のことを、はやく休ませてあげたいのだろう。
「とりあえず、部屋に入らせてもらいます。30分ほどしたら、食堂に行きますから」
「ん、わかったぞえ。……ああ、玲子さんや。実は、今日は先約のお客さんが、二人おってな」
「あ、そうなんですか?」
「大人数が来るって言うたんじゃが、それでもかまわんと言うてきてな。すまんとは思ったんじゃけど、わしらも客商売じゃからのぅ」
「ええ、構わないですよ」
 ねえ、と部員たちに送る玲子ウィンク。誰がそれに抗えようか。
「すまんのう。……男連中は、“はの間”。女連中は“ろの間”を使っておくれ。“いの間”はその二人がつかっとるから、間違えるでないぞ」
「ありがとうございます」
 さりげなく斉木が、入り口に立てかけてある見取り図をチェックする。それによれば、自分たちが宿泊する“はの間”は階段を上ってすぐ目の前にある大部屋のことらしい。大部屋とLの字に並ぶようにして客間があり、そのうちの中部屋が“ろの間”で、小部屋が“いの間”となっていた。
(………)
 図によれば、小部屋と中部屋は隣り合っているようだが、大部屋は中部屋と完全に隔離している。これならば大部屋からの騒音は小部屋まで届くまい。
(………)
 ふと、心置きなく枕投げができるな、と思ってしまった斉木君のことを、くれぐれも子ども扱いしないように。
「ああ、いらっしゃったようですね」
 ふいに、女性の声がした。皆が一斉にその方へ向く。
 背の高い麗人が立っていた。眉目秀麗にして、スレンダーなボディ。年齢は、20代半ばほどだろうか。すらりと流れるような長髪が、これまた美しい。
「こんにちは」
 軽く頭を下げてから、にこり、と笑う。その仕草、どれをとっても知性に溢れていて魅力的だ。
「おお、藤堂さん。こちらが、大人数の頭領・玲子さんじゃ」
 善三が、まずは二人を引き合わせる。部員たちは遠巻きにそのやり取りを眺めていた。
「はじめまして。城南第二大学の軟式野球部で、顧問を務める佐倉玲子といいます」
「これは、ご丁寧に。藤堂智子です。せっかく皆さんがお泊りになるところに、割り込むようになってしまって申し訳ないと思っています」
「いえ、そんな…………え?」
 さらりと耳に入ってきた彼女の名前に、聞き覚えがあった。
「それでは、しばらくの間ですが、どうぞよろしく」
 しかし女性が、一礼を残して去ってしまったので、込み入った話を振れなかった。
「ささ、大人数でこんなところにたむろしても疲れは取れんぞ。部屋へ、おあがり」
「え、ええ……それじゃ、お世話になります」
 若干の後ろ髪ひかれる想いを残して、善三に伴われるまま階段を上る玲子。その後に従うように、メンバーたちも板の段をきしませながら、部屋へと向かった。





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