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『STRIKE!!』
【スポーツ 官能小説】

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『STRIKE!!』(全9話)-259

「斉木は? どうするんだ?」
 所在なげに、ぽつねんとしている斉木君。哀愁さえ漂ってきそうなその姿は、しかし、とある声によって明るいものに変化した。
「透!」
 不意に投げかけられた、女性の声。
「あ、恵美姉ちゃん!」
「「“姉ちゃん”?」」
 見れば、きらびやかに着飾って、装いが見た目にも豪華な女性が立っていた。
「なんで、ここにいるんだよ?」
「久美叔母さんと一緒に、試合を見てたんだよ」
「えぇ!?」
 初めて知ったとばかりに、斉木が驚きを顕にしている。
「あたしらが来たって言うと、あんたボロボロになるからね」
 くすり、とその唇が悪戯っぽく緩む。斉木はそれを見るなり、なんだか小さくなっているようだ。
「久美叔母さんは?」
「あっちで待ってる」
 くい、とその顎が指した方向には、深紅で車高の頗る低い車があった。
「な、なんか、車が代ってるんだけど……この前のゼットはどうしたんだろう?」
「買い替えたってサ」
「ま、またぁ!?」
「ゼットもそうだったけど、あれもキャッシュで一括だって。独身貴族の、なんとやらだよねぇ、ほんと」
 亮と晶を余所に始まっている、二人の会話。眼を点にしている二人に気づき、ようやく恵美という女性が微笑みをこちらに向けてくれた。
「弟……っても、従弟なんだけどね。透が、世話になってます」
 ぺこり、と頭を下げる。その当たりの礼儀は、しっかりと心得ているようだ。
「甘ったれで、泣きべえの透だけど、しっかり皆の役に立ってたみたいで、よかったです」
「な、なんだよ、それ!」
 噛みついてきた斉木を軽くいなし、その首を小脇に掴んでうりうりとなぶる恵美。やっていることは過激だが、その表情を見るに、彼女が“弟”と呼んだ斉木に対してかなり深い愛情を持っていることはよくわかる。
「今日は、打ち上げはしないの?」
 もがく斉木を簡単にいなしながら、恵美は問う。呆気に取られてはいたが、亮は頷いてその回答とした。
「そっか……じゃあ、透はあたしが持って帰るね」
 ぐい、とそのまま斉木を持ち上げる恵美。華奢に見える体格からは想像もつかないほど、腕力が強そうだ。
「行くよ、透」
「う、うげぇす」
 うめきなのか、返事なのか、よくわからない斉木の答えであった。
「それじゃあね、お二人さん♪」
 様になるウィンクを残して、恵美は背中を向けた。しばらくは斉木を小脇に抱えたままだったが……
「「あっ」」
 その体を離すやすぐに向き合った体勢になると、なんと二人の顔がくっついた。
「キスしちゃった……」
 見た目には恵美が無理やりそうしたように見えるが……。短い接触の後、慌てたように何かをのたまっている斉木を捕まえると、問答は無用とばかりに再び恵美は、その顔をひっつけていた。
「―――」
「―――」
 そんなやり取りを遠目に見ながら、呆然としていた二人ではあったが、
「――…」
「――…」
 気がつけばその手が触れあい、絡まりあって……。
「………」
「………」
 引き寄せられるように、その唇が重なり合っていた。





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