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『STRIKE!!』
【スポーツ 官能小説】

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『STRIKE!!』(全9話)-174

 今日の発表でも教授に評価されていたのだが、意外に管弦楽は論説がうまい。なんでもないことにさえ、まるでそれらしい理由づけをしてそれらしく言うものだから、聞いている方はいつのまにかそのペースに乗せられてしまうのだ。
「ね、ねえ……管弦楽」
「なんだ?」
 京子が口ごもる。矢継ぎ早に悪態が出てくるばかりだから、管弦楽は珍しいものを見るように、京子の二の句を待った。
「あ、あたい……その……」
 今度はなにやら別の意味で穏やかでない雰囲気が。遠巻きの野次馬は、妙な期待を載せて二人を見守っている。……次の講義、始まるぞ諸君。
「? どうしたのかね?」
「………あのね、いまさらって気もするんだけどね……あたいその……」

 わくわくわく…

 遠巻きの興奮と期待は、最高潮に達している。
「い、入れて欲しいんだけど」

 どおぉぉぉぉぉ!

 と、遠巻きが沸いた。といっても、教室に残っていたのは4,5人の男子であるから、そう書くのはあまりに大袈裟が過ぎるのだが。
(お、おい聞いたか?)
(ダイレクトだなあ、おい)
(“入れて欲しい”だと……なんともまあ、節操のない)
(管弦楽も、堅物に見えてなかなかスキモノ……)
「って、うわあ!!」
 つかつかつか、とその遠巻きの前に京子が大股で近寄り、がみがみと吼えて彼らを追い散らした。“欲求不満でそれしか頭にない奴らは、センズリでもしてスッキリしやがれっ!”と。
「醍醐京子」
 ぜいぜい、と息を荒げる京子のすぐ後ろに管弦楽が来ていた。振り向くと、彼は、まるで何事もなかったように涼しい表情をしている。
「その申し出、喜んで受け入れよう」
「え……」
「君を歓迎しよう! 我が栄光ある櫻陽大学軟式野球部に!!」
「ちょっ……!」
 そして、いきなり肩を強く抱かれた。
 管弦楽としてはおそらく、軟式野球部員となることを自ら申し出てくれた彼女に対して“盟友”と言う意識が生まれ、それをもとになした行為のつもりであったろう。
(………)
 しかし、京子はその時、やっぱり自分は女であるということを強く意識していた。高鳴りを始めた胸がどうにも収まらない。
 相手が相手なのに……とはもう、彼女は考えていなかった。



「京、肩をあっためておくんじゃ」
「は、はいっ」
 監督の日内に呼ばれ、京子はすぐに控えの捕手とともにブルペンマウンドに向かった。
 醍醐京子が櫻陽大軟式野球部に中途入部してから3日後。彼女は、後期第4戦目となる享和大学との試合にベンチ要員として臨んでいた。
 今のところ試合は5回まで進行しているが、得点は4−3で櫻陽大学がリードしている。
 しかし、序盤に管弦楽を中核とするクリーンアップの長打攻勢で4点を先制しておきながら、今井が5回の裏に享和大の打線に捕まり、瞬く間に3点を失ってしまった。
 享和大学は目立つ選手こそいないが、総合的に見て投打にバランスのとれた好チームだ。今季は城二大や星海大の急激な台頭があって成績こそ奮っていないが、決して油断のできる相手ではない。実際の話、昨季は最後まで優勝を争い、直接対決に僅差で勝利して、ようやく降すことの出来たチームなのだ。


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