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『STRIKE!!』
【スポーツ 官能小説】

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『STRIKE!!』(全9話)-153

「今はリーグ戦で頭がいっぱいだろうから、それが終わったら晶ちゃん連れて実家に顔出せよ」
「そう、だな……」
「お、その気になったか?」
「ああ。今度、家に晶を連れてくよ」
 言ってみるもんだ、と務は思う。
 野球にのめりこむあまりなかなか帰省しない弟には、母親同様やきもきしていたところがあるから、その言葉を聞けてよかったと思う。実際の話、帰省と言うほど遠く離れているわけではないのだけれど…。
 務は心底嬉しそうに、かぱかぱと飯を食らった。よく噛んでいるのか怪しいほど、その食は早い。
「あ……」
 5杯目のおかわりを提示されたとき、喜んでそれを受け取った晶が声を無くした。
「空っぽ……」
「え、マジで?」
 話の聞き役になっていた亮は一杯目も済ませていない。晶に至っては、一杯も茶碗に盛っていない。
「あちゃ……すまんな……晶ちゃんの分も、食べちゃったか」
「い、いいんですよ。炊きなおしますから……」
 5合は炊いたはず。それが、あっさりと空になるとは。
「おふくろにさ、米送るようにいっとくわ」
「た、助かるよ」
 相変わらずの大食漢ぶりに唖然としながら、それでも亮はそんな兄に親しみが湧いて、以後の会話は殊更に盛り上がり、楽しい時間を過ごしたのであった。



「気をつけて。美野里さんにも、よろしく」
「ああ。悪いな、お邪魔しちまって」
 あまつさえ、飯まで食い尽くして……務は、炊きなおされた3合の御飯のうち半分を平らげてしまっていた。恐るべき食欲といえる。
「な、亮」
 不意に、弟に耳打ちをする。
「壁、薄そうだからな。“アレ”の最中は気をつけろよ」
「!?」
 うひひ、と悪戯に笑う兄。その仕草を見た晶も話の内容を察して、見る見るうちに顔が紅く染まった。
「うはー! やっぱ、こういう話が出来るってのはいいなあ!!」
「だあ! もう、帰れ帰れ!」
「いわれなくたってかえらあな。じゃあな亮、あんまり励みすぎて腰抜かすなよ!」
「こ、この……」
「バッティングは腰が命だからなあ! 股のバット振りすぎて腰を痛めたんじゃ、笑いの種にもなりゃしねえぞ!」
「うわあ!」
 あまりにでかい声で卑猥なことをのたまうので、慌てて扉を閉めた。
 その向こうでからからと笑う務は、ひとこと体に気をつけるようにと優しい忠告を二人に残して、そのまま笑いながら去っていった。
「………」
「………」
 その声が遠ざかっても、玄関で固まっている二人。務の言葉に意識したのか、なんとなく距離が縮まったまま、それでも動けない。
「……あ、晶」
 亮は、兄のことを詫びようと思った。
 昨日の試合が終わった後、亮は珍しく疲れが過ぎたのか帰り着くなり熟睡してしまって、いつもならばすぐにでも晶を愛していたのだが、それが出来なかった。
 それを逆に心配したらしく、晶は強壮のメニューを用意してくれたのだ。しかし、ガーリックを主体にした手の込んだ彼女の料理は、ほとんどが務の胃袋に収まる結果となり、晶としては望まぬ方向に進んだのではないかと、亮は気がかりなのである。
「お兄さん、やっぱり優しい人だね」
 だが晶はそんなことを気にもしていないように、務が去った後の扉を見ている。
「あたし一人っ子だから、亮がうらやましいな」
 亮の方を見て、微笑む。
「……っ」
 その愛らしい仕草に、亮は胸が高鳴ってしまった。
「あっ、りょ、亮?」
 気がつけば、晶を抱きしめていた。その動きは、無意識だった。
「晶…」
 しかし、抱きしめてしまえば、その柔らかさや暖かさが伝わってきて、亮の気持ちを高めていく。晶の身体を欲する己の感情を、確かなものに変化させてゆくのだ。


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