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『STRIKE!!』
【スポーツ 官能小説】

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『STRIKE!!』(全9話)-146

第7話 「難 敵!!」


 10年目となる隼リーグだが、早くも後期日程に突入していた。
 熱戦が続く中、関西区域で同じように開催されている“猛虎リーグ”の優勝大学と、甲子園で行われる決定戦への出場権利をかけて総合優勝を争うのは、城南第二大学と櫻陽大学の2チームに完全に絞られた。
 その戦跡とこれからの日程を見てみよう。


後期日程 <城南第二大学>

第1試合 対星海大  5−0(総合勝点:15)
第2試合 対法泉印大 9−0(総合勝点:18)
第3試合 対享和大  8−1(総合勝点:21)
第4試合 対仁仙大
第5試合 対櫻陽大


後期日程 <櫻陽大学>

第1試合 対法泉印大 7−2(総合勝点:16)
第2試合 対星海大  2−1(総合勝点:19)
第3試合 対仁仙大  5−3(総合勝点:22)
第4試合 対享和大
第5試合 対城二大



「………」
 城南第二大学の後期戦におけるスコアを見る限り、総合成績で首位に立っているはずの櫻陽大は余裕を持つことが出来ない。
 前期に対戦したときは4−3で辛くも勝利を収めた。しかし、それはあくまで相手チームの戦力が充分に固まっていなかった春先でのこと。それ以後のライバルチームの顕著な成長と、目を見張るその戦いぶりに、楽観することなど出来そうもない。
「城二大は強いわね」
「そうですね」
 チームのマネージャー・高峰千里がファイルに目を落としながら、捕手の津幡に問い掛けた。
 千里は小さなころから喘息で、激しく身体を動かすことは出来ない。それでも、大好きな野球に携わることのできるマネージャーとしてチームを支えている。
「千里、個人ファイルはこれか?」
 野球に憧れながらそれができないもどかしさを抱えていた千里にその道を教えたのは、二ノ宮である。この二人、同じ小・中・高の出身で家もご近所の幼なじみだ。
「そっちじゃないわ。これよ、昭彦」
 付け加えるならばプライベートにおいて深い関係にある。
「多分、最後に勝ちを争うのは城二大でしょう。その時に、私たちと彼らを分けるものは何だと思う?」
「そ、それは……」
「いいよ、遠慮しなくて。千里さん、間違いなく投手力ですよ」
 言葉を濁した津幡の後を、今井がつなげていた。
「今井くんはいい投手よ。先発投手として充分な成績も残している。……ただ、相手との相性を考えると不安は拭えないわね」
 舌に絹をきせない語り口は千里の専売だ。しかし、その背景にある卓抜した理論と情報力の前に誰もがそれに反論できず、言葉を呑むしか出来ない。
 千里の言うように、櫻陽大の主戦投手・今井は決して悪い投手ではない。確かに被安打や失点は少ないとはいえないが、制球力のある変化球を軸に試合を締めたものにしてきた。ただ、軟投派であるだけに、長打力のある打線に対して力負けしてしまうのは否めない。
「今年の城二大は、層は薄いけれど、中核は凄まじい破壊力を持っているから」
 4番と5番のデータを並べる千里。そこには、投手として目を覆いたくなるほど峻烈な数字が羅列されていた。
「今までの試合で、4番が放った本塁打が8本。5番が11本。打点にいたっては、数字にするのも嫌気がさすからやめとくわ」
 そして3番の出塁率を考えると、数字だけで見れば今大会最強のクリーンアップといえる。昨季の成績からは想像もつかない戦力の飛躍である。レギュラーメンバーが抜けたと言うのが、逆に好結果に繋がったのだとしたら、あまりにも皮肉が過ぎるところだ。


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