投稿小説が全て無料で読める書けるPiPi's World

『STRIKE!!』
【スポーツ 官能小説】

『STRIKE!!』の最初へ 『STRIKE!!』 9 『STRIKE!!』 11 『STRIKE!!』の最後へ

『STRIKE!!』(全9話)-10

 回は進む。相変わらず、亮以外の打者は晶の前に三振の山を築き、誰も塁に出られない。
 一方、亮も新藤の持ち味を引き出し、凡打の山を築いていた。唯一、晶には2塁打を喫したが、後続を打ち取り、事なきを得た。
 6回の裏、1死ランナーなし。そして、打席には2本塁打の亮。
 3度目の対決は、少し、緊張感が漂う。
「栄輔、レベル2でいくよ」
 晶が、亮から目線を外さずに言った。“ええぇぇ!!”というのは長見の叫びだ。それも耳に入ってこないのか、ひたすら亮を睨みつけている晶。
「と、捕れねえよ」
「真ん中に構えてればいいよ」
「う〜」
「ほら、行きなさいよ」
 渋る長見を、蹴る。
 泣きそうな顔のまま、長見は定位置に戻ると、念入りにマスクを被り直した。
 打席に入る亮を見上げる。とても、数日前には手も足もでなかった相手とは思えない。
 その構えには貫禄があった。これでは、あの時とは立場が逆だ。
(くそ、レベル2で吠え面かきやがれ)
 半ば捨て鉢にミットを構える。レベル2というのは、この前、捕ることが出来ずマスクにまともに当ててしまったあの速球のことだ。
 晶が脚をあげる。滞空時間の長いそれは、より強い勢いを、体のしなりに与える。
 そして、鞭打つようにしなる左腕から、速球が放たれた。

 ガコンッ!!

「んぎゃ!」
 長見の情けない声。やはり、マスクにあてたらしい。彼は顔をしかめながら、ボールを晶に投げ返していた。
「………」
 亮の目には、球筋が……はっきりと見えていた。確かに、これまでの速球に比べると一段速い。しかし、そのボールの軌跡はしっかりと見極めることが出来た。
(あの時の、球だ)
 亮は思い出す。城二大のグラウンドで対戦したとき、最後に投げられた速球。あの時は、全く見えなかった球筋が、今日は恐ろしいほど良く見えた。
(練習の賜物かな)
 と、思う。ベンチでのびている兄の務に、メットのひさしを触ることで感謝の意を表した。
 晶に敗れたあの日から、亮は務に頼み、打撃を基礎から鍛え直した。左手一本でのトスバッティング。超至近距離からのフリーバッティング。そして、気の遠くなるような回数の素振り。それらは全て、バットスイングを強化するためのメニューだ。
(球の伸びについていくには、スイングを鋭くしなきゃダメだろう)
 兄の助言が聞いている。
(あと、速球に目を鳴らすには……集中力だ)
 ボールにかいた数字を、言い当てるという奇妙な練習までした。
 それらの練習が、果たして実を結んでいる。
 だから、ボールが見えたのだ。
「!」
 2球目は、ファウル・チップ。タイミングはあっている。あとは、あの伸びに負けないだけのスイングができるかどうかだ。
 3球目、4球目と、速球が続いたが、どれもファウル。
 そして、5球目。亮は、球筋の軌跡がはっきりと見えた。
(真ん中!)
 コースも、これまでの速球と全く同じ。亮は、鋭い腰の回転を殺すことなく腕からバットに伝えていく。


『STRIKE!!』の最初へ 『STRIKE!!』 9 『STRIKE!!』 11 『STRIKE!!』の最後へ

名前変換フォーム

変換前の名前変換後の名前